2024年9月26日に、アビディティ・バイオサイエンシーズ社から「デルデシラン(旧AOC 1001)」の国際共同治験について日本でも実施されることが公開されました。
DM-familyでは、日本の患者と家族のために、公開されているclinicaltrials.govと「HARBOR™」サイトに基づいた情報をお届けします。
14か月にわたって行う、HARBOR™研究とは
本研究は、「HARBOR™研究」という名称で、世界各国・約40か所の病院で行われる国際共同治験第3相です。
正式な名称は「筋強直性ジストロフィー1型治療薬としてのAOC 1001静注用の有効性及び安全性を評価する第III相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、国際共同試験」です。
HARBOR™研究は手の機能への効果のほか、ミオトニア、筋力、日常生活動作などに、青年から成人の筋強直性ジストロフィー1型患者にどのくらい効果があり、安全であるかを確認します。研究参加期間は14か月で、日本では国立病院機構 青森病院、国立精神・神経医療研究センター病院、大阪大学医学部附属病院、国立病院機構 大阪刀根山医療センターが実施施設です。
*実施施設への問い合わせはしないでください。
HARBOR™研究に参加できる患者の条件
HARBOR™研究は世界各国で合計150人募集されますが、一般的に国際共同治験は日本には約1割程度が割り当てられます。
全患者が参加できるわけではなく、下記の条件にあてはまることが必要です。
- 16歳から65歳まで
- 筋強直性ジストロフィー1型の遺伝学的診断(遺伝子検査)を受け、リピート数が100以上あること
- 少なくとも10メートルは自力で歩行できること(装具・足関節装具の使用は可)
- 現在妊娠中、授乳中、または研究期間中に妊娠する予定がないこと。避妊要件に従う意思と能力があること
正式参加登録はスクリーニング後
HARBOR™研究では最初にスクリーニングが行われます。スクリーニング期間内に研究実施病院で、研究参加に適格かどうか(たとえば、症状や合併症の程度が基準に合致するか、1年以上決められた日に必ず来院できるかどうかなど)を慎重に確認した後に、正式に参加できる患者が選ばれます。
なお、参加条件はデルデシランの安全と効果を確かめるためのものです。条件に該当しないからといって、薬事承認を受けて販売できるときに使えない、とは必ずしも言えません。
条件に合わなくても、希望を持って参加する患者たちを応援しましょう。
プラセボ投与群とデルデシラン投与群にランダムに分けられます
参加者はランダムに分けられ、半分がデルデシラン、残りはプラセボ(偽薬)を約8週間ごとに静脈内注射で投与されます。患者も研究担当病院の医師やスタッフも、誰がデルデシランを投与されているかはわかりません。
この方法は「ランダム化二重盲検プラセボ対照」と呼ばれており、研究中の試験薬(この場合はデルデシラン)が有効で安全かを確認するためによく使われる方法です。
参加の前にインフォームド・コンセントを行います
HARBOR™研究の目的や、参加する患者が守るべき義務などを理解した上で、研究参加に正式に同意するための機会(インフォームド・コンセント)があります。下記について、説明を受け、よく考えて決めましょう。
- 研究の目的
- 必要な研究訪問と手順
- 研究参加の潜在的なリスクとメリット
- 研究に関する機密保持
- 参加者および介護者の個人情報がどのように使用されるか
- 参加が任意であることに関する情報
なお、HARBOR™研究に参加するかどうかは、患者自身の意思で決められます。途中で参加したくなくなったら、いつでもやめることができます。HARBOR™研究をやめたからといって、不利益な扱いを受けることはありません。
研究参加中の安全確認を行います
HARBOR™研究では、以下のような検査を通じて、患者の状態が良好であることを確認していきます。
- 健康に関する質問
- 身体検査
- バイタルサイン
- 妊娠検査
- 血液および尿サンプルの採取
- 心電図(ECG)
- 筋力と機能の検査
研究参加には交通費などの補助があります
HARBOR™研究は参加する患者の負担軽減のため、交通費の補助などがあります。詳細は実施する病院に確認してください。
研究終了後、任意の延長試験が計画されています
アビディティ・バイオサイエンシーズ社は、HAPBOR™研究が終了した後、プラセボ/デルデシランを分けることなく、研究参加者全員が「デルデシラン」を服用できる「オープンラベル延長 (OLE) 試験」を計画しており、規制当局の承認を待っているところです。
「オープンラベル延長 (OLE) 試験」は、デルデシランを長期間投与することでどのような変化が起きるかを確認するためのものです。
参加は任意で、参加するかどうかは参加者が決めます。また、延長試験を辞退する患者は、延長追跡期間において最後の投与後約 2 か月間、HARBOR™ 研究の一環としてフォローされます。
さらに詳しい情報は、臨床研究等提出・公開システム(jRCT)をご覧ください。