治療法開発が進行中。患者が協力して治療法を手にしよう
根本治療は、遺伝子の異常を治すこと。まずは原因を知っておこう
筋強直性ジストロフィー1型は、19番目染色体にある遺伝子(DMPK遺伝子)の末端で、DNAの塩基C(シトシン)、T(チミン)、G(グアニン)の繰り返しが異常な長さになることによって起きる病気です。通常の繰り返し数は5~37回ですが、患者は50回以上、数千回になる方もいます。
なぜ繰り返しが長くなると病気の原因になるのか?それは、次のようなことが起きているからです。
①DNAの繰り返し数が伸びている
②DNAを転写してできたRNAも伸びる
③伸びたRNAが細胞核の中に「ヘアピン構造」となって溜まる
④溜まったRNAが、RNAの並べ方を調節するタンパク質「MBNL」を吸着する
⑤「MBNL」が不足し、ほかのタンパク質のもととなるRNAの並べ方が異常になる→いろいろな症状になる
例)
塩化物イオンチャネル→筋強直
心筋ナトリウムチャネル→不整脈
インスリン受容体→糖尿病
治療薬開発で研究されている、さまざまな方法
筋強直性ジストロフィーの根本治療法として検討されている主な例としては、次のようなものがあります。
- 核酸医薬品によって、細胞核に溜まったRNAそのものを分解する方法
「アンチセンス・オリゴ・ヌクレオチド(ASO)」という方法などが検討されています。 - 細胞核に溜まったRNAにMBNLが吸着しないようにする方法
低分子化合物を使う方法などが検討されています。
治験はもう、行われている
筋強直性ジストロフィーの根本治療法についての治験は行われています。
脊髄性筋萎縮症の核酸医薬品による治療薬「スピンラザ」で有名になったアメリカの製薬企業、IONIS Pharmaceuticalsは、2016年に核酸医薬品「IONIS-DMPK2.5Rx」の治験をアメリカ内で行っていました。この治験では薬品が細胞に届く力が弱かったため、さらに強めるための研究を継続しています。
また英国の製薬企業AMO Pharmaは先天性筋強直性ジストロフィーの患者を対象とした治療薬「Tideglusib」の治験を2017年にロンドンで行っています。
治療薬は遠い外国での話ではなく、目前の話です。
根本治療を受けられるよう、できるだけこれ以上悪くならないようにする、そして治験を実現して、販売を認可してもらえるようにすることが大切です。
「生活の質」や「歩行機能」に着目した治療法も
細胞の中だけではなく、患者の生活に密接な治療法の開発も進んでいます。
- 認知行動療法などを用いた治療法
ヨーロッパ各国が連携して「OPTIMISTIC」という研究が進められています。
筋強直性ジストロフィーの患者を対象に、認知行動療法と軽いエクササイズで症状の改善を目指しています。
日本国内でも患者のQoL(生活の質)についての研究が始まっています。 - HAL医療用下肢タイプによる歩行機能改善治療
サイバーダイン社で開発されているHAL医療用下肢タイプによって、患者の機能改善治療ができる可能性が広がってきました。医療保険適用もされるようになり、導入している病院も増えています。
治療法を国内で販売するためには治験が必要
治療薬、治療機器とも、国内で使えるようにするためには、治験を行って患者での効果があることを示す必要があります。新しい治療法である「HAL医療用下肢タイプ」や「スピンラザ」も、患者が治験に協力したからこそ使えるようになりました。
患者登録を行うと、患者自身の力で有効な治療法を販売してもらえる可能性を広げられます。