研究班「人工呼吸療法の効果研究」参加者募集

日本医療研究開発機構 レジストリと連携した筋強直性ジストロフィーの自然歴およびバイオマーカー研究班では、人工呼吸療法の効果を研究するために患者を募集しています。

目標症例数は50名です。

体内の酸素が少ないと症状は重くなる。だから人工呼吸器

筋強直性ジストロフィーは、全身の筋力が徐々に低下していきます。そのため、呼吸をする筋力も低下します。

体内の動脈血酸素飽和度(SpO2)は、96~99%が標準値です。これを下回ると、全身の臓器に十分な酸素を送れない状態(呼吸不全)となっています。

「わたしは大丈夫!」と思っても、まずはSpO2を測定してみましょう。
病院で測ってもらって数値を確認するのも良いですし、最近はSpO2を測るパルスオキシメーターが普及していますので、健康管理のためにも時々測ってみることもお勧めです。

さて呼吸不全は、呼吸に関係する筋力の低下が原因とみられますので、その補助のためには人工呼吸療法を行います。
一般的には「非侵襲性人工呼吸療法(気管切開をしない人工呼吸器)」が使われます。

患者・家族は、よく「人工呼吸器を使うのだから、もう先が短い」ととらえがちですが、筋強直性ジストロフィーの人工呼吸療法は呼吸を補助するためのもの。むしろ、人工呼吸療法を行わない方がリスクは高くなります。

人工呼吸器は、睡眠時無呼吸症候群のような、一般的な病気の治療にもよく使われています。現代では身近な治療器具と言えます。

人工呼吸器になじめない患者がいる?

筋強直性ジストロフィーでは多くの患者が人工呼吸器を使っていますが、最初は誰であっても慣れるまでに時間が必要です。

人工呼吸器は機械です。例えば初めて自転車に乗るときに、すぐに補助輪なしに乗れないのと同じで、ほんの少しの工夫とコツで機械と自分がうまく合うようになります。

ほとんどの患者が人工呼吸器を使えるようになる一方、患者の中には「どうしてもできない」「どうしてもイヤ」という人もいます。

呼吸不全に対して、人工呼吸療法を行えないと、医師も手詰まりになり、非常にリスクが高い状態となります。

この研究の意義は、人工呼吸療法の効果を示し、ほかの患者にも貢献すること

筋強直性ジストロフィー患者では、人工呼吸療法を受けて生活の質が上がったという声が良く聞かれます。

  • 日中、眠くなくなった
  • 朝、スッキリ起きられる
  • 以前より、やる気になってきた

しかし、単なる個人の感想であっては、証拠となりません。

多くの筋強直性ジストロフィー患者が助かるためには、しっかりした証拠(エビデンス)にしていく必要があります。

そこで、この研究では下記のような検査を、原則1年ごとに行います。

1.「レスピチェック」という簡単な質問票を使って、生活の中でうまく呼吸ができているかどうかを確認します。

2.下記のような検査を行い、心と体の機能を詳しくチェックします。

  • 生活の質(QoL)の評価:SF-36
  • 筋強直性ジストロフィー患者の生活の質(QoL)の評価:MDHI
  • 眠気の評価(ESS:Epworth sleepiness scale)
  • 努力性肺活量(FVC:forced vital capacity)、
  • 心電図
  • ホルター心電図
  • パルスオキシメトリー(動脈血酸素飽和度:SpO2
  • 心エコー、胸部XP、血液検査

オプション:高次機能検査

呼吸で酸素が全身に行き渡らない場合、脳にも影響があることがわかっています。

そこで研究期間中に1回、下記のような高次機能検査を行う場合があります。(施設によっては実施できない場合があります。詳しくは主治医に確認してください)

  • MMSE (Mini-Mental State Examination)
  • 数唱(順唱・逆唱)(CAT: Clinical Assessment for Attention Test)
  • TMT-A,B(Trail Making Test)
  • WCST (Wisconsin Card Sorting Test)

人工呼吸器が付けられなかった方も継続参加が可能

人工呼吸療法になじめず、使えなかった方も継続して研究に参加できます。

来院頻度

評価頻度:前(0か月)、6か月後、1年目、2年目、3年目の計5回
(検査入院が必要になる場合があります。詳しくは主治医にお尋ねください。)

研究対象者登録締切

2023年4月30日

研究に参加できる人(選択基準)

下記の条件にすべて当てはまる人です。現在、人工呼吸療法を行っていない患者のみ参加できます。
主治医から説明を受けて、人工呼吸療法導入に同意された方もされなかった方も対象です。

  • 研究同意説明文書に同意した、18歳以上の患者
  • 遺伝子検査で筋強直性ジストロフィー1型と診断されている患者
  • 慢性肺胞低換気(FVC60%以下)
  • 動脈血酸素飽和度(SpO2)が94%以下・動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)45Torr以下のいずれか、または両方を満たす患者
  • 夜間低酸素が見られる患者
  • 下記の病院に通院している患者

国立病院機構鈴鹿病院

国立病院機構仙台西多賀病院

国立大学法人大阪大学

国立病院機構大阪刀根山医療センター

国立病院機構東埼玉病院

国立病院機構松江医療センター

国立大学法人岡山大学

国立大学法人愛媛大学

国立病院機構東名古屋病院

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

国立大学法人福井大学

国立病院機構北陸病院

国立病院機構熊本再春医療センター

国立病院機構青森病院

国立病院機構旭川医療センター

(今後、対応病院が増えた場合は、当会サイトでお知らせします)

研究に参加できない人(除外基準)

  1. 既存の重篤な疾患を有し、本研究における評価の実施が困難であると、研究責任医師あるいは研究分担医師に判断された患者。
  2. その他、本研究の参加に適さないと、研究責任医師あるいは研究分担医師に判断された患者。
  3. NIVを装着したことのある人(ただし1年以上間隔を開ければ可)

研究計画名

筋強直性ジストロフィーに対する非侵襲性人工呼吸療法の効果に関する多施設共同研究

研究責任者

久留 聡先生 

国立病院機構鈴鹿病院 脳神経内科 院長

問い合わせ: 316-research@mail.hosp.go.jp