患者数が少なく、多くの症状が出る。個人差の大きな病気が持つ課題

筋強直性ジストロフィーは、1万人にひとりとも言われる患者数の少ない病気です。筋力低下があるだけでなく、さまざまな内臓の病気が起き、症状には個人差があります。

一方、治療法が有効かどうかを確かめるためには、同じような症状の程度を持つ患者を集めて臨床試験(治験)をする必要があります。
もともと患者数が少ないだけでなく、さらに同じ症状の程度を持つ患者をそろえるのは非常に難しいことです。
患者数確保のために国境をまたいで治験を行う場合も考えられますが、国際間で比較できる項目でデータが取れていなければ、本当に同じ症状の程度を持つ患者なのかどうかがわかりません。

そこで、2009年に神経筋疾患の国際的なネットワークである「TREAT-NMD」とフランスのマリーゴールド財団が、世界中から筋強直性ジストロフィーの有識者を集めて、「筋強直性ジストロフィーの患者登録を行う際、データを取るべき最小限の項目」についてワークショップを行い、合意しました。
この「最小限、データを取るべき項目」を、ワークショップが開催されたオランダの都市ナールデンにちなんで、「ナールデン・データセット」と呼びます。

ナールデン・データセット決定後から8年。全世界で1万人の患者登録

2009年に開催されたワークショップから8年が経過し、どのような状況になっているかを2017年4月に調査した結果が、論文として発表*されました。
2017年時点では、以下のような状況となっています。

  • 調査対象である25の患者登録システムのうち、21システムが稼働(内2システムは2017年時点で準備中)
  • ナールデン・データセット決定後、さらに15の患者登録システムが開始
  • ナールデン・データセットの必須・推奨項目すべてに対応している患者登録は、日本の患者登録システム「Remudy」を含めて8システム
  • 患者登録を行っている患者は全世界で1万人以上

*Eight years after an international workshop on myotonic dystrophy patient registries: case study of a global collaboration for a rare disease
https://ojrd.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13023-018-0889-0
リンク先:Orphanet Journal of Rare Diseases(オープンアクセスでどなたでも読むことができます)

2014年から開始した「Remudy」患者登録が、2017年時点で世界第4位に

日本での筋強直性ジストロフィー患者登録は、2009年のワークショップから5年を経過した2014年から開始されました。

患者登録は2000年の米国ロチェスター大学「筋強直性ジストロフィー・顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー患者登録」が最初で、2009年以前にすでに6システムの患者登録が進んでいました。

2009年のワークショップ後、世界中で相次いで患者登録システムが開始されました。欧米諸国はもちろん、中国では2012年から、エジプトでは2013年から患者登録が開始されています。

やや遅れたものの、2014年に開始した日本の筋強直性ジストロフィー患者登録数は、2017年時点で554人。
フランスDM-SCOPEの2203人、米国ロチェスター大学の1117人、同じく米国の筋強直性ジストロフィー財団の1051人に次ぐ人数となりました。
*18歳以上の患者数での比較

2017年時点の患者登録数

患者と医師、ともに努力していこう

患者登録「Remudy」は、最小限とされるナールデン・データセット38項目を反映しています。
しかしその項目を満たすためには、大変な労力がかかることも事実です。
患者登録開始後からわずか4年弱の日本で世界第4位が実現できたのは、データ記入に協力している主治医の先生方と、検査をいとわない患者自身による努力の結晶です。

患者登録の目的は「治験の実現」、そしてその先へ

患者登録は、治療法の治験実現が大きな目的ですが、それだけではありません。

患者のデータがそろえば、病気の全体像や自然歴が明らかになること、「医療の標準化」が進み医療レベルが向上すること、登録を用いた臨床研究が可能になることなど、治療法開発以外にも多くの意義があります。

実際に日本では2018年に、この病気の診療ガイドライン作成に向けた前調査となるアンケートを行い、患者登録をしている患者が現在どんな医療を受けているのかを解明するために協力しました。

患者登録で集まったデータは、この病気の新たなビジョンを拓くためのものでもあるのです。

国際間の協力からできた患者登録は、実際に患者が登録してこそ、はじめて意味を持ちます。
患者のみなさん、これからも良き医療に向けて協力していきましょう。

【謝辞】
本論文の著者として日本から参加されている大阪大学大学院 高橋正紀先生と、前国立精神・神経医療研究センター 木村円先生(現 日本医療研究開発機構)に深謝いたします。