世界初、エビデンスに基づく「筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020」完成
2020年8月25日、「筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020」が発刊されました。医師に向けた内容で、病気の全体像、診断、遺伝、さまざまな臓器で起きる障害、社会サービス、先天性・小児期発症、全身麻酔など包括的な内容です。
筋強直性ジストロフィーでのエビデンスに基づくガイドラインは、世界初*1となります。
この病気の経験豊富なエキスパート(専門家)の推奨も加わり、患者代表として当会の籏野あかね理事長も参加して意見を述べるなど充実したガイドラインとなりました。
平均寿命は「正確には不明である」
多くの患者と家族が「平均寿命は55歳」という既報告を読み、落胆や絶望感を感じています。籏野あかね理事長は、専門医が多数そろったガイドライン会議の席で「外来患者などすべての患者を含めた平均寿命なのか?」と質問。ガイドラインには、平均死亡年齢(寿命)は「正確には不明」と記載されただけでなく、平均寿命はどういった集団の調査なのかで大きく異なるため「『平均』死亡年齢の解釈、個々の患者への説明については十分な注意と配慮が必要である」と明記されました。
また、重篤な症状で生まれてくる先天性筋強直性ジストロフィーの子どもの母親が、疾患受容が困難な場合に育児放棄が懸念されるため、「(重篤で生まれても、ほとんどの子どもが)独歩可能・経口摂取可能になること、様々な保険・社会サービスが利用可能など希望的な情報の提供に努めることが大切」と示されました。
ガイドラインは、患者と医師が合意して医療を選択するためのもの
ガイドラインは法律や規制ではなく、強制力を伴うものではありません。患者と医師が症状に合わせてどんな医療を選択していくのか相談する時に、エビデンスとエキスパートの推奨を参考にすることで、納得した選択が行えるよう支援するためのものです。
籏野理事長は、ガイドライン会議の中で「(人工呼吸器をつけるかどうかは)患者自らの意思による」と発言しました。家族や周囲が決めるのではなく、ひとりの個人として自らの意思で選びたい。籏野理事長は「どんな状態になっても、希望を持って生きていたい」と語っています。
筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020 目次
Ⅰ.総論
- 筋強直性ジストロフィーとは
- 診断・遺伝相談
- 機能評価・検査、合併症検索
- 治療開発の現状と治験推進のための基盤整備
- 社会支援・制度
Ⅱ.各論
- 運動機能障害・リハビリテーション
- 呼吸の障害
- 心臓の障害・不整脈
- 嚥下障害・消化管・歯科学的問題
- 中枢神経障害
- 代謝障害
- その他合併症
*腫瘍、眼科、耳鼻咽喉科領域について記載があります
- 妊娠周産期管理・先天性患者
- 全身麻酔・外科的処置
*1:2020年8月25日現在、筋強直性ジストロフィー患者会調べ