第22回DIA日本年会2025にて事務局長が講演

2025年10月19日から21日、東京ビッグサイトにおいて第22回DIA日本年会2025が開催されました。

DIAは、国際的な非営利団体組織で、医薬品・医療機器などの関係者を集めて情報交換や教育活動を行っており、日本をはじめ、世界各国で年会が開催されています。

10月20日に行われたセッションS21「『患者起点の創薬』を明日のあたりまえに:ドラッグロス克服に向けた患者団体・海外アカデミア・ EBP との連携で実現する未来【ペイシェントエンゲージメント】」において、筋強直性ジストロフィー患者会(DM-Family)の妹尾みどり事務局長が講演を行いました。

本セッションは独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の佐藤淳子さんが座長を務め、講演は妹尾事務局長のほか、国立精神・神経医療研究センター中村治雅さんから「アカデミアの挑戦:Remudyを通じた希少疾患研究と国際連携」、株式会社モダリス森田晴彦さんから「日本の創薬環境の課題」があり、規制当局、患者団体、医療機関、製薬企業がそろいました。

さらにパネルディスカッションでは座長と演者のほか、ファイザーR&D合同会社から大島三千世さんが参加され、創薬にかかわる人々が同じテーブルで話す機会となりました。

第22回DIA日本年会2025にて事務局長が講演
写真は左から、PMDA佐藤淳子さん、モダリス 森田晴彦さん、国立精神・神経医療研究センター 中村治雅さん、妹尾みどり、ファイザーR&D合同会社 大島三千世さん

日本の患者は治験を正しく理解しているか?

DM-Family妹尾みどり事務局長から、患者団体の立場としてさまざまな問題提起がありました。

筋強直性ジストロフィーは、現在のところ、アメリカで10の治験がありますが、日本では1しかありません。製薬企業から日本人の治験の理解度に疑問が呈される一方で、妹尾事務局長は2024年にオランダにて、患者を含む一般市民に対して治験について教えるセミナーが開催されていることを目の当たりにしました。

「患者がドラッグロスの解決に寄与するためには、治験について正しい情報を教えることから始めるべきでは?」と妹尾事務局長は考え、2025年7月に神経筋疾患患者・家族に向けた「治験について正しく知ろう」と題したハイブリッドセミナーを開催しました。

理解しても絶望するのは、なぜか

ハイブリッドセミナーの参加者に事後アンケートを取ったところ、これまでのセミナーにはなかったことが起きました。

「理解した」と答えていても、「治験は誰でも受けられると思っていたのに、がっかり」「患者の症状を見ると治験は受けられない。お先真っ暗」。確かに、一定の理解はしている・・・・・・しかし、この回答者は自分と家族のことだけしか考えていないのでは?

変われ、日本語の「PPI」

PPI(Patient and Public Involvement=患者・市民参画)は、患者の視野が広く、患者なりの理解力と思考力があることが前提です。

PPIは、「患者様を中心に」と患者と家族を甘やかす言葉ではありません。Health Research Authority(英国保健・医療研究局)のウェブサイトは、「PPIとは」を次のように示しています。

“By public involvement in research we mean research that is done ‘with’ or ‘by’ the public, not only 'to', 'for' or 'about' them.”

(研究における「PPI」とは、市民を単に研究の「対象」としたり、市民の「ために」あるいは「について」研究したりするのではなく、市民「とともに」、あるいは市民「によって」行われる研究を指します。)

To / For / About: 市民がデータ提供者や被験者として扱われる(受け身)。

With / By: 市民が研究の計画や運営に直接関わり、共に作り上げる(主体的)。

もちろん、命にかかわるような喫緊の事態では、こうしたことはできません。

しかし、平時のときでも病気とともに暮らす市民のひとりとして、妹尾事務局長は「PPIは、まずは患者と家族が正しい知識を学ぶことからです。患者団体として、みんなで正しく学ぶ機会を作り、自分だけでなく、みんなのためになることを考えられる人を育てていきたい」と話しました。

医師とスタートアップ製薬企業からの講演とパネルディスカッション

続く国立精神・神経医療研究センター中村治雅さんの講演では、神経・筋疾患患者登録(レジストリ)「Remudy」が国際的なネットワーク「TREAT-NMD」と協調してきた話がありました。

筋ジストロフィーはすべて希少疾患であり、患者数が少ないために臨床試験が実施できないのではないか、と以前から課題を持っていたことが語られ、各専門医の協力でRemudyを運営しつつ、中村さんは現在もなお、レジストリの国際協調に尽力されています。

最後の講演、モダリスの森田晴彦さんの講演では、臨床試験を行って薬を販売するまでに、技術、資金、規制、場、人が必要であり、それぞれに日本が持つ課題が示されました。とくに、アメリカでは企業間を転籍していくのは一般的で、それによって知の交流が生まれていることに比べ、日本では未だに雇用が硬直化しているという指摘は、製薬だけでなく、イノベーションに遅れる傾向がある現在の日本全体が持つ課題と言えるでしょう。

パネルディスカッションでは、「上下関係ではなく、それぞれの立場でのコミュニケーションをもっと持つべき」と意見が一致しました。たとえば患者を「患者様」と呼び・呼ばれるままで、対等な意見交換ができるでしょうか。

お互いの立場が持つ課題を、ともに解決できるようになれば、それはPPIの成果の一端になるのではと思います。


なお、本セッションは下記のみなさまのご協力のもとに実施されました。厚くお礼を申し上げます。

国立がん研究センター東病院 小村 悠さん

国立がん研究センター 後澤乃扶子さん

ノバルティス ファーマ株式会社 鈴木和幸さん

ファイザーR&D合同会社 木村崇史さん