国際筋強直性ジストロフィー会議IDMC-13報告(2):患者は病気をよく知っているほど、良い人生を送れる

IDMC-13で、明地雄司副理事長とフイッシャー直子が講演

2022年6月22日、国際筋強直性ジストロフィー会議IDMC-13の「Organization Update」にて、日本の患者団体として筋強直性ジストロフィー患者会(DM-family)から、明地雄司副理事長と会員のフイッシャー直子さんがジョイント講演を行いました。

IDMC-13での講演の模様はこちらでご覧いただけます。(日本語字幕付き)

「歩けているから病院に行かない」で起きる悲劇

明地副理事長は、筋強直性ジストロフィー1型の患者であり、内科医でもあります。現在は6名の筋強直性ジストロフィー患者の診察にあたっています。

そのうちの一人が、学校での体育の授業中に突然、心室細動による心停止を起こしました。

今なお多くの患者と家族が、「歩けるのになぜ、病院に行かなくてはならないのか?」と言います。「筋強直性ジストロフィーの本当の恐ろしさを知らないままでいる・・・」。

明地副理事長は医師として、辛抱強く、患者に向けて定期受診の必要性を説得しています。そして、患者団体の副理事長として、ひとりの患者として、もっと多くの人々にこの病気の啓発が必要と考えています。

会場で講演する明地雄司副理事長
治療法がなくても、絶対にあきらめない

「患者が筋強直性ジストロフィーについてよく知っているほど、良い人生が送れると信じています」と説く明地副理事長。その例として、会員のフイッシャー直子さんを紹介しました。

フイッシャーさんは、先天性筋強直性ジストロフィーの娘がおり、自身も患者、そして母親も患者と、3世代にわたっての患者です。最近はフイッシャーさんの弟も同じ病気を発症していることがわかっています。

フイッシャーさんは、先天性筋強直性ジストロフィーの娘さんを帝王切開で出産しています。
「この子のために、何かできることはないか」。そして、ある小児神経内科医と出会い、その医師から「今後5-10年の間に、筋強直性ジストロフィーの研究は飛躍的に進展するだろう」と告げられました。

「治療法がなくとも、絶対にあきらめない」。フイッシャーさんは、子どもを育てていくためにも自分自身の検査を受けることが大切と気づき、専門医を探し、訪問リハビリを受け、患者登録を行い、DM-familyに入会しました。

そして、「わたしにも患者としてできることが何かあるのではないか」と考えるようになりました。

フイッシャーさんは全世界に向けて「わたしが自分の経験や知識を自分の力にしたように、今夜、すべての筋強直性ジストロフィー患者さんとそのご家族を勇気づけていくことを約束します」と語りました。

明地副理事長は「僕は彼女がたくさんの困難を経ていても、筋強直性ジストロフィーを学ぼうとする意志を誇らしく思います」と応えました。

フイッシャー直子と明地雄司(右上は座長の大阪大学 高橋正紀教授)
ハーパー教授の言葉が、日本のDM-familyの原点

ピーター・ハーパー教授の名著、「筋強直性ジストロフィー 患者と家族のためのガイドブック」。2016年、DM-family設立当時に私達は、京都の学会に出席していたピーター・ハーパー教授と直接お会いし、お話を伺う機会がありました。

2016年、ハーパー教授と記念撮影

みんなにも、ハーパー教授の言葉を伝えたい。とっさにビデオメッセージの撮影をお願いしました。一瞬、躊躇したハーパー教授は、カメラに向かい、ゆっくりとお話しになりました。

“難しい病気を理解するために書いた本が、こうして患者さんが自国の言葉で読めることは素晴らしい。理解するプロセスが、病気に立ち向かうすべての人々を勇気づける。”

病気から目を背けるのではなく、理解していかなくてはならない。
それが、自分自身の人生のためになり、医師・研究者たちすべてを動かす原動力となる。

ハーパー教授の言葉は、日本の患者会DM-familyの目標になっています。

  • 患者と家族が、筋強直性ジストロフィーの研究に協力すること。
  • 患者と家族に、筋強直性ジストロフィーの正しい知識を提供すること。
  • 広く一般の人々に、筋強直性ジストロフィーについて知ってもらうこと。

DM-familyは、さまざまな困難がある筋強直性ジストロフィーについて、少しずつでも知っていく会です。

なぜなら、筋強直性ジストロフィーの全貌は未だ明らかではないからです。
だからこそ、IDMCは続き、筋強直性ジストロフィーを克服しようという研究者や医療者が集まります。

そして患者と家族も、この病気を知らないでいる自分を認め、少しずつでも知っていけば、より良い未来が開けるでしょう。

ともに、筋強直性ジストロフィーの未来を変えるために。わたしたちDM-familyは活動を続けてまいります。

次回IDMC-14は、2024年春にオランダで開催されます。

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