私たちの未来のために。大阪大学のAI医療研究「AIDEプロジェクト」に参加中です

AIDEプロジェクトって?どんな形で参加しているの?

こんにちは、筋強直性ジストロフィー患者会(DM-family)会員の小川晃佑です。
今日は、私が参加している「AIDE(エイド)プロジェクト」についてご紹介いたします。

AIDEプロジェクトとは「ヘルスケアにおけるAIの利益をすべての人々にもたらすための市民と専門家の関与による持続可能なプラットフォームの設計」という研究、つまりは「AIと医療関係者と患者市民をつなげるプロジェクト」です。

詳細についてはAIDEプロジェクトのホームページをご覧ください。
「AI医療への患者・市民参画を目指す研究、AIDEプロジェクト」

私が参加しておりますのは、そのプロジェクトの患者・市民参画パネル(PPIP)。研究者7名、公募で選ばれたPPIPメンバー11名で構成されております。

これから本格的な活用が期待される「AIを使った医療」をどのように進めていくかにあたり、国や病院関係者だけではなく、患者さんや市民の皆様にも広く意見を聞いてどのようなことに疑問や不安を持っているかなど話し合いを行います。

このプロジェクトは2か月に1回程度会議が開催され、2023年3月まで行われます。

1回目は自己紹介。メンバーはいろんな個性を持った方々ばかり。

1回目はオンラインシステムを使いウェビナーのような形式で行いました。

参加された方は研究代表者である大阪大学大学院人間科学研究科の山本ベバリーアン教授、同大学院医学系研究科 医の倫理と公共政策学分野の加藤和人教授など、大学で医療研究をされておられる方々のほか、PPIPメンバーとして20代から70代、いろんな病気の患者さんやその介護者など個性豊かなメンバーとなりました。

AIについてのどのようなイメージを持っているか、どのようなことを期待しているかなどPPIP各メンバーが話し、その中であった意見や質問に対し、各教授が丁寧に答えておられました。

第1回 AIDEプロジェクト患者・市民参画パネル(PPIP)

意見や質問から新たな「気づき」も

個性豊かなPPIPメンバーから出てくる質問は医療のことはもちろんですが、AIを利用することにあたっての安全性についての質問も多く出ました。

情報セキュリティに関することや通信技術に関すること、AIを使った医療に関して想定されるトラブルのこと、倫理のことなどPPIPメンバーの個性ある内容の質問が相次ぎました。

どのPPIPメンバーも事前に勉強されておられ、質問を受けた研究者なども気づいてなかった視点の質問も出て、質問したPPIPメンバー以外のメンバーも、新たに気づくこともたくさんあり、非常に有意義な1回目のミーティングでした。

2回目・3回目はグループに分かれてのディスカッション

2回目は3グループに分かれて「AIと医療への期待と不安」に関するディスカッションを行いました。各グループにPPIPメンバー3名と研究者1名というグループ構成。

オンライン電子付箋ツールを使用し、その付箋にPPIPメンバーがAIと医療への「期待」と「不安」をそれぞれ書いて発表し、それに対してほかのメンバーや研究者が質問をしました。

付箋で文字にして「期待」や「不安」を書くことにより、伝えたいことや聞きたいことが明確になり、活発な議論が行われました。

第2回 AIDEプロジェクト 患者・市民参画パネル(PPIP)

3回目もオンライン電子付箋ツールを使用したグループミーティングを使い、グループでのディスカッションに加え、それらの意見をまとめてグループ単位で発表していきました。

参考:オンライン電子付箋ツール Apisnote

4回目は医療AIの倫理と参画についての講義

東京大学准教授、井上悠輔先生から「『医療AI』の倫理と参画」についてお話をお聞きしました。

先生は、東京大学医科学研究所・公衆衛生分野において医療にAIを利用するにあたっての倫理的・法的・社会的に関する研究を行われております。

第4回 AIDEプロジェクト 患者・市民参画パネル(PPIP)

AI=人工知能ではなくなった

先生のお話の冒頭、今回のお話の前提として「医療AI」=様々な段階、取り組みの集合体という説明を受けました。

このPPIPのミーティングを行っていく中で、私を含めたPPIPメンバーのほとんどの方がAI=人工知能という考えがあり、「AIがあれば医師がいなくてもある程度対応できるようになる」という意見もありました。

また、そのことを前提にグループミーティング、ディスカッションを行ってまいりました。

しかし、井上先生のお話は、「AIは人間や医師の代わりをしてくれるもの」ではなく、AIは「医師のサポートを行うもの」を目指しているとのことでした。

また、2018年にアメリカの医師会、2019年には世界医師会が
AIを「人工知能」(artificial intelligence)としてではなく、「拡張機能」(augmented intelligence) として位置づけるべき 」とも発表されておられます。

井上先生の話はほかにも

「地域性や病院の規模などによって、集められたデータに偏りがでる。」
(ベッド数が多ければ多いほど、データの偏りが少ない)

「リスクの線引きをどうするか」
(例えばポリープを発見するAIの場合、現状ポリープになる可能性が10%以上ある場合その個所を表示するようにしているが、それを50%にまで上げると誤検知は少なくなり検査もスムーズに行えるものの、見落としが増える)

など、医療とAIについて専門的に研究されておられる先生ならではのお話を聞くことができました。

今後も患者会活動のひとつとして、研究参画をしてまいります

私自身は、筋強直性ジストロフィーを持つ妻と二人で暮らしており、仕事と介護を続けながら、患者会活動を通じて学び、ほかの患者さんとご家族のためにもなる活動を続けています。

AIDEプロジェクトも、患者会活動の一環として参加させていただいています。

知っていれば、希望が見えてくる。ともに、病気の未来を変えていきましょう。

(筋強直性ジストロフィー患者会 小川晃佑)