筋強直性ジストロフィー国際学会IDMC-12報告(2):次回は日本。世界中の患者と友人に
2019年6月10日~14日、筋強直性ジストロフィー患者会(DM-family)は、スウェーデンで開催された筋強直性ジストロフィー国際学会IDMC-12(International Myotonic Dystrophy Consortium Meeting)に患者会テーブル出展を行いました。
出展担当は副理事長の明地雄司、事務局長の妹尾みどり、副事務局長の土田裕也の3名。各国の先生が立ち寄り、日本の患者と家族の様子をご覧いただきました。
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世界の患者団体、患者と家族で記念撮影
患者会紹介パンフレットを配布
日本にも患者と家族がいることを印象付けるため、IDMC会場で配布するパンフレットを英語で制作しました。
制作時はちょうど春。会員のみんなに頼んで、桜と一緒に写っている写真を集めました。
会場では「桜だわ!」「日本の桜は有名ね!」と喜ばれました。
IDMC-12でもMDSGと隣同士で展示
前回IDMC-11で、お隣同士で展示をしたイギリスの患者団体MDSG(Myotonic Dystrophy Support Group)と、今回も隣同士で展示しました。
MDSG代表のマーガレット・ボウラーさんと明地は前回IDMC-11以来、メールのやりとりをしており、今回のテーブル展示についても何かと相談をさせていただきました。
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マーガレット・ボウラーさんと
海外の先生方や患者会と交流
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先生方は日本の患者と家族、患者会の人数などについて関心を持たれていました。先天性筋強直性ジストロフィーの子どもたちの七五三の写真や、患者登録数の推移などに注目が集まりました。
「筋強直性ジストロフィーの患者登録数が900人近いとはすごいね。ところで、福山型筋ジストロフィーは患者登録は何人なの?」という質問もありました。日本にしか患者がいないとされる福山型筋ジストロフィー。しかし海外の先生方はよくご存じで、情報を集められているようです。他病型の質問を受けても答えられるように、知っておくことが大事と思いました。
学会に個人で参加されている患者と家族もおりました。オランダから来た方は、学会すべてを熱心に聴講されていました。上肢に障害があるようで、お名前を書いていただくときに大きく振りかぶるようにして、ゆっくりと書いていただきました。
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先天性筋強直性ジストロフィーの患者団体、Congenital Myotonic Dystrophy Fight Fundのエマ・ジェイン・アシュレーさんとは前回のIDMC-11以来。元気そうにしていました。
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エマ・ジェイン・アシュレーさんと
患者団体プレゼンで日本の患者と家族をアピール
5月31日金曜日、IDMC-12主催者のアン・ベリット・エクストローム先生から「患者団体のプレゼンテーション時間を取りますが、参加されますか?」とメールが来ました。6月9日の開催まで10日ほど。「準備できるか?しかし、ここで発表しなくては」と考え、事務局長の妹尾が急遽プレゼンを制作しました。
日本語の原稿を書いている時間はありません。本業の仕事の合間を縫って原稿とスライドを作り、パンフレットの翻訳者と校閲者にお願いをして英語チェック。顧問の先生方にも急ぎ確認をいただき、当日のプレゼンに臨みました。
妹尾は最初に、筋強直性ジストロフィー患者会の理事長、籏野あかねと副理事長の佐藤美奈子・明地雄司を紹介し、2018年度に実施した名古屋でのセミナー、札幌での先天性筋強直性ジストロフィー勉強会について話しました。
籏野あかねがDM-familyティータイムを開催し、呼吸リハビリを行うなど充実した療養生活を送っていること、佐藤美奈子がHAL医療用下肢タイプで治療を受け、150mの歩行ができたこと、医師でもあり患者でもある明地雄司が、患者と家族とともに話している様子は、先生方が3人の名前を覚えてしまうほどのインパクトがあったようです。
とりわけ、IDMC-12ではHAL医療用下肢タイプについての演題が1題もなく、結果的にHALの効果を患者会がお見せすることになりました。国立病院機構 仙台西多賀病院でのHAL治療の様子、その後、車いすなしで歩く佐藤美奈子のビデオに、多くの先生が驚いていました。
最後に妹尾は「With knowledge comes hope(知れば希望が見えてくる)」、そして「I hope all DM patients and families around the world can become friends with each other (世界中すべての筋強直性ジストロフィー患者と家族が互いに友人となることを望みます)」と言った瞬間、大きな拍手に包まれました。
日本語字幕入り
IDMC-13、2021年に日本で開催決定
患者団体のプレゼンテーション後、次回2021年のIDMC-13は日本で開催するとの話を受け、大阪大学大学院の高橋正紀先生から関西エリアの紹介がありました。大阪か神戸で開催することとなりそうです。
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最終日、「ファミリーデー」は「患者と家族の日」
6月14日、IDMC-12の最終日は患者と家族のための日です。閑静な住宅街にある会場で、患者と家族が情報を得るために参加しました。ファミリーデー会場にはお茶やお菓子、ランチが用意され、患者と家族の交流の場ともなっていました。
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DM-familyでも患者会テーブル展示を行いました。多くの患者さんと家族が小冊子「知ってください筋強直性ジストロフィー」英語版、DM-familyの紹介をしたパンフレットを持ち帰ってくださいました。
「With knowledge comes hope、いい言葉ね。その通りだわ」とご家族の方におほめいただきました。
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台湾の李 光永先生も一緒に手伝ってくださいました。李先生はIDMC-11以来、明地とメールで連絡を取り続けていただいています。
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李 光永先生(右)と
ファミリーデーの午前中は患者と家族に向け、前日に発表された治療薬についてのプレゼンテーションがありました。
写真右側の先生が英語で説明し、左側の先生がスウェーデン語で同じ内容を説明しています。スライドをゆっくり見ることができ、わかりやすい内容でした。
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ファミリーデー午後は、日常のケアについて多くの講演がスウェーデン語で行われ、患者と家族が熱心に聞いていました。
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アン・ベリット・エクストローム先生は、「スウェーデンには患者会がなくて……」とおっしゃっていました。李 光永先生も、「台湾には患者会がない」と言われていました。
しかし今回、スウェーデンで患者と家族がファミリーデーを熱心に聴講している様子を見ていると、今後は変わって行くのではと思いました。
どの国であっても患者と家族が集い、知識を分かち合い、支え合うことが、この病気を克服する原動力となります。
日本でも、ほんの4年前までは筋強直性ジストロフィーの患者会はありませんでしたが、患者であってもなくても互いに尊敬を持ちながら協力し合うことで、少しずつでも前進できると考えます。
IDMC-12に参加されたすべての方に、感謝します。
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患者会テーブルにて、日本の先生方と記念撮影