「日本にも患者がいる」国際学会IDMC-11に初参加

2017年9月5日(火)から9日(土)、米国サンフランシスコにて開催されたIDMC-11 に、当患者会DM-family会員の有志5名が自費参加。初のテーブル展示を行い、日本にも多くの筋強直性ジストロフィー患者と家族がいることを、世界の研究者・製薬企業に向けてアピールしました。IDMC-11では5 日間の会期中、この病気に関する多数の研究が発表され、日本の先生方からも最新の研究成果が報告されました。



世界の研究者・臨床医と患者が一堂に会するユニークな学会「IDMC」

IDMC(International Dystrophia Myotonica Consortia)は、2年に一度開催される筋強直性ジストロフィーの国際学会です。米国で長く研究と診療を続けている芦澤哲夫先生(現Houston Methodist Hospital)と、患者であるShannon Lordさんが共同開催したことから始まりました。

Lordさんには小児期発症筋強直性ジストロフィーを持つ2人の息子さんがおり、ご主人とともに研究に向けた寄付を申し出たことがきっかけとなっています。Lordさん自身が、学会で研究団体に患者と支援者を引き合わせ、第4回目の学会では約100名の患者と家族が出席、以来、IDMCには多数の患者と家族が参加することが慣例となっています。
IDMCは世界の研究者、臨床医と患者が一堂に会する、またとない機会となっています。



日本の筋強直性ジストロフィーのみの患者会として初出展

当患者会では、設立時から「IDMCに参加しよう」を合言葉にしていました。
患者数の少ない病気だからこそ「日本にも患者がいる」と示し、海外の患者会と肩を並べ、ともに活動することが大切です。

慣れない英語での交渉、出展費用の支払い、すべてが当患者会にとって初めてのことで、事務局のスタンフォード大学John Day 先生はじめスタッフの方々からの温かいサポートでテーブルをお借りすることができました。



John Day 先生

テーブル展示では、当患者会の活動を示すパネルを展示し、小冊子「知ってください筋強直性ジストロフィー」に患者会案内を加えた英語版小冊子を配布しました。
海外では文字だけで記載するのが一般的な「療養のコツ」をイラストで示した小冊子は、めずらしいようで、多く方に手にとっていただきました。
また、7月に開催した「先天性筋強直性ジストロフィー親子のための勉強会」の写真はひときわ注目を集めていました。





副理事長 明地雄司がIDMCステージで講演

事務局からのご厚意で、各国の患者会から活動紹介や、患者としての自分についてステージで講演する時間をいただきました。

当患者会からは副理事長の明地雄司が登壇。自身について、患者だからこそ患者の心を理解する良き神経内科医を目指していると語り、その後、患者会活動を紹介しました。
小冊子発行やセミナー、勉強会開催などについて説明し、多くの先生方や患者団体のみなさまに大きな感動が広がりました。
講演内容はこちらです)






台北市長安記念病院 李光永先生と



オークランド市立病院 Miriam Rodrigues先生と

日本の先生方も大活躍

大阪大学大学院の中森雅之先生、兵庫医科大学の木村卓先生が講演されました。
ポスター展示は160 枚以上あり、日本からはQoL 研究や患者登録の状況、血糖変動評価、日本の筋強直性ジストロフィー2 型、昨年度までの研究班の実績などが報告されました。



大阪大学大学院 中森雅之先生



兵庫医科大学 木村卓先生



大分大学 藤野陽生先生

海外製薬企業とも交流

7月に開催した「先天性筋強直性ジストロフィー親子のための勉強会」にメッセージをいただいたAMO Pharma社のJoseph Horrigan先生と、先天性筋強直性ジストロフィー治療薬について直接お話しを伺いました。
Horrigan先生は日本での活動がとても印象に残ったようで、当患者会の活動について温かい感謝のお言葉をいただきました。



英国患者会、Margaret Bowlerさんはじめ、多くの海外患者会と交流

当患者会は設立時から、英国のMyotonic Dystrophy Support Group代表のMargaret Bowlerさんとメールでのやりとりをしていました。Margaretさんは、Peter Harper先生著「筋強直性ジストロフィー 患者と家族のためのガイドブック」に前書きを書いておられます。
テーブル展示では隣同士。すっかり友人となり、一緒にランチをいただいたり、会議の合間にお話しをしたりしました。



Margaret Bowler さんと

先天性筋強直性ジストロフィー患者支援団体Congenital Myotonic Dystrophy Fight Fundや、フランスのAFM-TELETHONなどさまざまな患者会とも交流を続けることになりました。



Congenital Myotonic Dystrophy Fight Fund のみなさんと

最終日には、米国の患者会Myotonic Dystrophy Foundation(MDF)の年次総会にも出席しました。今回、IDMC-11とMDFの年次総会は合同開催で、全米から数百人の患者と家族が集まりました。患者と家族のシンポジウムでは、患者の体験談が語られ、みんなが熱心に聞き、意見交換をしていました。



Myotonic Dystrophy Foundation年次総会

日本には患者さんが少ないの?

MDF年次総会はハイアットホテルで開催され、ディナーパーティーにも参加しました。その席で、John Day先生が来られて「日本には何人くらいの患者がいるの?」と質問があり、「1万人にひとりくらいです」と答えると、先生は「そうだよね、僕はそのくらいだと知っているんだが……。向こうのテーブルのみんなが、日本には患者の数が少ないんじゃないか、って言うんだ。僕から、みんなに説明するよ!」とのこと。

「知らない」からこそ、誤解がある。
知っていれば同じ患者と家族同士です。世界中の多くの方に筋強直性ジストロフィーの患者と家族がいることを知っていただき、国境を越えて連携していきたいと考えています。

4年後、日本開催か

IDMC-11の最後に、芦澤哲夫先生から次回(2年後)のIDMC-12はスウェーデン イエーテボリで開催されると紹介がありました。さらに4年後には「日本かカナダで開催する」とのこと。日本で、世界の医師や研究者、患者会のみなさんをお迎えすることになるかもしれません。




左から:
木村円先生(国立精神・神経医療研究センター)、松村剛先生 (国立病院機構 刀根山病院)、John Porter先生(MDF)、芦澤哲夫先生、妹尾みどり(当患者会)、高橋正紀先生(大阪大学大学院)