こころには状態を変化させるパワーがある!:会員限定Zoom談話室「ケアを担う家族で集まろう!」レポート

2021年11月28日(日)、筋強直性ジストロフィー患者会の会員で患者を介護する家族、患者自身が患者である家族を介護している、その経験がある方に限定した、Zoom談話室「ケアを担う家族で集まろう!」を開催しました。

今回は日頃、患者のケアを担う家族・介護者に着目。家族が抱えるこの病気の不安、自身ではどうしようにも解消できない気持ちの問題…吐露する機会もなくこころに秘めている介護者は少なからずいます。

そこで当会では国立精神・神経医療研究センター病院臨床研究・教育研修部門臨床研究支援部 遠藤麻貴子先生を講師にお招きし、心理学的、社会面からこころの仕組み、ケアについて講演していただきました。

遠藤 麻貴子先生

こころとは?こころのセルフケアを知ろう!

まず、遠藤先生はこころとはどのようなものかをお話しされました。

私たちが普段感じているこころとは脳がつかさどるものです。

喜怒哀楽といった感情、考えのほかに身体と一緒に反応すること(知覚・身体の感覚)、行動を引き起こすこともあります。

この4つのこころの要素は互いに影響し合って、私たちの中で生じます。

自分のこころの状態に気づいて、こころの状態を調節することを「こころのセルフケア」といいます。

遠藤先生は「自分のこころを調節することで、病気である事実は変わりませんが、病気の感じ方や捉え方に変化が生じ、気持ちが楽になったり、活動範囲が広がったりと、人生に良い影響が出るかもしれません」と患者・介護者目線でこころの状態を理解すること、調節することで生じる行動や結果を説明してくださいました。

介護負担感を正しく把握して介護者のこころの安定を図ろう!

介護負担とは、介護者が患者を介護する際に感じるストレスをいい、介護負担感は介護負担をどの程度感じているかを表す言葉です。

介護負担感は、介護することで思う感情、身体的負担、経済的負担や社会生活などといった主観的な感覚で感覚は人それぞれ違います。

遠藤先生が研究されている筋強直性ジストロフィー患者の介護者宛てに調査したアンケートでは約3割の介護者が顕著な介護負担感があると回答結果が出ています。

特に、介護者の負担感が大きいのは以下の2点です。

  • 患者が将来どうなるかという不安
  • 患者が介護者に頼っていると感じる

遠藤先生たちの研究から、介護者の「患者に対する見方」が介護負担感に関係していることがわかってきました。

  • 介護負担感が高い介護者ほど、患者の抑うつ度が高いと見ている
  • 患者自身は介護者の介護負担感とは関係なく、自身の感じる抑うつ度は高くない

「これらの因果関係は現在研究中ですが、介護者のこころの安定が介護負担感を改善させる可能性があるかもしれません」と遠藤先生は介護者のこころの安定の大切さを話されました。

コロナ禍に負けない!介護家庭だからこその強み!

昨年から続くコロナウィルスの影響で家庭内対立の機会が増えましたが、介護家庭では「一緒に会話をする」、「お互いに情緒面のサポートをする」など、介護をしていない家庭と比べて団結力が高いことも調査でわかってきました。

介護家庭には特別なことをしなくても、その場で出来る対応が得意なこと、精神的な繋がりを大事にしていることから緊急時・行動制限時、ストレス状況に対する適応力を発揮できる下地が出来ている家庭が多いのです。

このように苦境からの回復力、困難をはね返すバネの力のことを「レジリエンス」と言います。

介護者だからこその強みを知って意識してほしい「レジリエンス」の高め方

患者と同様に介護者も苦境からの回復力、「レジリエンス」を高めることが重要です。

では、介護者はどのようにしてレジリエンスを高められるか、遠藤先生から行動、心理両方の視点からご説明いただきました。

介護者自身も心身のセルフケアを実践しましょう!

まずは、介護者自身も患者と離れる時間を持って趣味や気分転換などを楽しむことが大事です。

そのためにはヘルパーやデイケアなど使える支援を最大限に活かすなど工夫をしていきましょう。

介護者の多くは責任感の強さや自分自身をケアする罪悪感から支援を躊躇することがありますが、支援は積極的に求めましょう。

困ったときに助けを求められることは「援助希求力」という立派な能力です。

自分のこころの状況を「ありのまま」観察してみる。

心理面では自分のこころの状態をすこし離れた視点で、客観的(冷静)に見るクセをつけると、自分が本当に必要な行動がとりやすくなります。

1970年代の研究では状況のコントロール感がしっかりしている人ほど、自己決定に関する認識が変わり、活動量とともに幸福度も上昇することがわかっています。

これを、私たち筋強直性ジストロフィー患者・家族に置き換えると、以下のように考え、選択することを意識して自分の力を信じることができるようになっていきます。

筋強直性ジストロフィー患者と介護者のための心理・社会的支援の研究は始まっている!

ここで、遠藤先生から現在研究されている「筋強直性ジストロフィー1型患者と介護者のためのこころと活動のセルフケア・プログラム」についてお話しいただきました。

この研究はこころと社会活動のセルフケアにおいて、より良い人生を生きる方法を学ぶ心理教育的なプログラムです。

研究メンバーは心理士をはじめ、社会福祉士、作業療法士、療育士、精神科医、神経内科医と多職種、多領域のメンバーで構成されています。

当事者だからこそ理解し合える、支え合える介護者同士のピアサポート

同じ難病を家族にもつ介護者同士相談に乗るピアサポートはとても有効なサポート資源です。

ここで、遠藤先生から相談に乗る際のポイントを挙げていただきました。

・何が何でも解決してあげよう、としなくても大丈夫!

相談をする介護者の多くは悩んでいることを声にして話すだけですっきりし、聞いてもらえるだけで考えが整理される効果があります。

・自分にとっていい解決法でも、必ずしも相手に合うとは限らない

同じ体験をしているが、患者とその介護者の状況や気持ちは同一ではなく、様々です。自分が良かったから相手にも良いはず!と決めつけないようにしましょう。

・つらいときは、まずは自分を労りましょう

三つ目のポイントが特に重要で、遠藤先生も「自己を犠牲にするようなことはないようにしてほしい」と話されました。

ブレイクアウトルームで語り合おう!

遠藤先生の講演、質疑応答のあとは3つのブレイクアウトルームにわかれてそれぞれのテーマに沿って自由に話し合う時間を設けました。

ブレイクアウトルームでは遠藤先生も加わり、普段のケアと先天性の子を持つ親が抱える成長する子どもの支援について不安に思っていることや、講義中に聞けなかった個人的な悩みを打ち明け、遠藤先生の意見や同ルーム参加者の経験談を語り合いました。

心配事、相談の他に音楽に関する話題が非常に盛り上がりました。

先天性のお子さんが好きな番組が「音」に関するものが多く、音楽が好きという話題に同ルーム参加者に「私も学生時代コーラス部で音楽に携わっていましたよ!」と言う声が。

また、外部のサポート(ホームヘルパーやデイケアなど)ではなく家族内のサポートに頼りがちになるのは周囲に自身の病気を知られたくない、恥ずかしいというネガティブな感情ばかりではなく「家族だと“あれとって”と言えばすぐ伝わるし、自分の言いたい言葉を言葉が少なくても感じ取ってくれる」という意見がありました。

ブレイクアウトルームでの交流後、遠藤先生から「色々な立場の方からお話しを聞いて、介護者と患者と支援するサポートが周知されていないこと、長い期間介護をされている参加者でも迷いながら介護をし続けているという事実に私自身“学び”の時間でもありました。」と、笑顔で談話室の終了の挨拶をいただきました。