冬だからこそ楽しくおしゃべり!DM-family会員限定「体をゆるめてキレイに話す:構音障害リハワークショップ2023」レポート

2023年12月17日(日)、DM-family会員限定「体をゆるめてキレイに話す:構音障害リハワークショップ2023」を開催しました。

筋強直性ジストロフィーの症状は筋力の低下をはじめ、多臓器にわたる合併症があります。

筋力低下の症状は私たちの生活に欠かせないコミュニケーション「会話」にも大きく影響をします。

何気ない会話でも「今、なんて言ったの?」「ごめんなさい、もう少しゆっくり(はっきり)話してほしい」といわれたことは患者問わず誰にでも経験があるかと思われますが、筋強直性ジストロフィー患者は口周りの筋肉が低下することによって発音がうまくできない「構音障害」による影響が多く見られます。

DM-familyでは毎年12月、会員限定オンラインワークショップを開催し、相手に伝える・伝わるコツや聞き手の心得など講師をお招きして学び、実際に声に出して練習し講師からアドバイスをいただくといった活動をしています。

今回は会話の技術向上だけではなく、体をゆるめてキレイに会話をするには?をテーマに「詩」を使った朗読、個人でも家族とでも一緒にできるリンパケアレッスンを行いました。

講師は2023年春まで国立精神・神経医療研究センターで言語療法に携わり、現在は独立しオンライン言語療法でご活躍されているResonante(レソナンテ)代表の織田千尋先生です。

織田千尋先生

レッスン前に自己紹介と課題の読み上げ、録音

普段のウェビナーとは違い、「声を出す」ことが重要なため、司会の佐藤美奈子副理事長から参加者へ事前に配布された「詩」とセットで自己紹介を行いました。

前回の構音障害リハワークショップで好評だった、レッスン前後の読み上げ録音を行い、これから始まるレッスンにメモを構える熱心な参加者の姿も見られました。

冬だからこそ体を温めて楽しくおしゃべりする3つのコツ

織田先生から、「通じやすい話し方のための3要素」についてお話しいただきました。

私たちが日常会話の中で「聞き取りやすい・通じやすい」会話には以下の3つが基本となっています。

1.声の大きさ、響き

吐く息に溶け込ませるように声を響かせてみましょう

2.話す速度

声が小さくても、ゆっくり話すことで通じやすくなります。

3.発音

舌、唇、下顎などをしっかり正しく動かすことで聞き取りやすい発音になります。

「これらがすべて出来ていると会話は通じやすいですが、どれか一つでもしっかり意識して出来ているだけでも話しやすさ・聞き取りやすさは抜群に変わってきます」と織田先生。

体をゆるめるレッスン!
ポイントは「自分を愛してあげること」

私たちは日常生活において、緊張やストレスといった刺激を受けると自律神経の中の「交感神経」が優位になり、体が縮こまるような常に体に力が入っているような状態になっています。逆に、自律神経の「副交感神経」が優位になると体がゆるみ、リラックスしている状態を表します。

体を緩める、リラックスした状態にするための究極のポイントは「自分を愛してあげる・大切にしてあげること」です。

日本人には馴染みがありませんが、「ハグ」にはリラックス効果があり、親子はもちろん、一人で行っても効果抜群と言われており、ハグをするときに優しく触れて、呼吸すると自然と体が緩んでいきます。 参加者はそれぞれの環境で、ハグを実践。少しリラックスしてから織田先生は「日本人はどうしても自分より他人を大切にすることを美徳とされていますが、自分がハッピーじゃないと周りを幸せにできないので、まずは、自分を認めてあげて大切にすることが大前提です」と、体を緩めるために大切な心得をお話しされました。

家族で仲良くハグ!
ペットやぬいぐるみをハグするのも体を緩める効果があります

織田先生からはハグのほかに「耳たぶまわし」、「包み込むように顔を撫でる」、「下あご突き出し」、「顎を左右に動かす」、「肩甲骨を動かす」といった体を緩める体操を教わりながら実践しました。

すべての体操に共通して織田先生は「優しく」を強調されていました。

耳たぶの後ろにあるくぼみに親指をひっかけて
中指で耳たぶに「優しく」触れながら耳たぶを回します。
胸の前で肘を曲げ、肩の力を抜いた状態で肩を回すのではなく
肩甲骨を意識して動かしてみましょう
反対側の手で耳たぶに軽く触れながら腕をあげて、
軽さを確認しながら体のゆるみをチェック

話す速度は「意味の切れ目で区切りをつけて」

話す速度の調節の仕方で大事なポイントは「意味の切れ目で区切りをつける」ことです。

課題の詩を使って一節の中から一つの言葉ずつ区切り、発声練習をしました。

織田先生からは「意味の切れ目で区切りをつけると次の言葉と間が開いても内容が聞き取りやすい状態なので間を怖がらないでください」と、アドバイスを頂きました。

舌の位置を上げて発声をさらにスムーズに「あによべ体操」

通常、舌の位置は上の歯茎あたりにあります。しかし、コロナ禍で会話する機会が減り、舌の位置が下がっている人が多くいらっしゃいます。そこで、舌の位置を上方させる「あによべ体操」を教わり、参加者全員で10回「あー」「にー」「よー」「べー」(舌を出す)を発声した後、参加者の中から「舌の位置があがった!」と効果を実感する声が上がりました。

ビフォー/アフターを聞き比べ!講師、参加者同士で講評。データ上でも変化を発見

織田先生から一通りレッスンを受けて体がリラックスした状態で参加者一人ひとり課題を読み上げ録音しました。

録音した音声を参加者同士で講評しあいました。

自己評価の点では、

「最後の読み上げになっていくと少し、焦ってしまった」

「レッスンを受ける前より、言葉の一つ一つを意識して読み上げてみた」

「元々、自分の声が嫌いで最初の録音は自分の嫌いな声だったが、アフターの声は自分でもこれなら聞けるかな?と感じた」

といった自己評価があがる一方で、聞き手側からは

「マスク越しでもよく聞き取れていた」

「文節で区切られていたのでとても聞きやすく、情景を想像させるような雰囲気がでていてとてもよかった」

とレッスンの効果を実感していました。

織田先生からは「最初の録音は緊張から声がこもっている方が多く、2回目の録音の方が声の出し方が最初より前に出ているのが印象的でした。間を取ることで相手への伝わり方が変わってくることが再確認できました。ご自身に厳しくしてしまうと体も声も縮こまってしまうので自信をもって自分はこれでいいんだ!という気持ちでお話していくのが一番かなと思います。そのためにも日頃からご自身を愛してください」と、全体的な講評をいただきました。

さらに、録音スタッフから「参加者全体的にビフォーの録音とアフターの録音を比べるとアフターの方が2~3秒録音時間が伸びており、先生から教わった間も音声の波形から確認ができました」と、データ上からもレッスンの効果を再確認できました。

さいごに

一人ずつ詩の一節を読み上げ、和やかな雰囲気の中でワークショップを閉会しました。

構音障害は適切なリハビリテーション。普段から意識して練習を繰り返すと、ご自分の努力次第で改善されることが多いです。

改善により患者自身のQOL向上だけでなく患者家族、友人、パートナーなど多くの人たちによりよい関係性が築いていけると信じています。

織田千尋先生はじめ、参加者の皆様、ありがとうございました。