国際筋強直性ジストロフィー会議IDMC-13報告(1):コロナ禍を越え、筋強直性ジストロフィーの研究が集結

コロナに屈せず、奇跡を巻き起こしたIDMC-13

2022年6月22日~25日、大阪で国際筋強直性ジストロフィー会議IDMC-13(International Myotonic Dystrophy Consortium Meeting)が開催されました。

各国で同時多発的に起きたパンデミックのため、2021年開催を1年延期したものの、コロナウイルスの猛威は収束する気配がありません。そこでIDMC-13組織委員会は、研究者・医療者向けセッションを、オンラインと会場で参加できる「ハイブリッド方式」として、2022年6月に開催すると決断しました。

世界中の研究者・医療者たちは、コロナ禍でも着々と研究を進めていました。
6月22日~24日の研究者・医療者向けセッションで集まった論文数は100を越えました。

最終日の6月25日、PPIセッションとして、患者と市民、一般の方に向けてDM-familyが主催したウェビナー「もう、治験は始まっている」には、患者と家族だけでなく、製薬企業、医療者、研究者、656名が参加。

筋強直性ジストロフィーを治したい、という世界中の研究者や医療者たちの成果と、患者と家族、多くの一般の方の力も加わり、IDMC-13は会期中の参加者合計が約800名に達し、コロナ禍を越えて、大成功を収めました。

IDMC-13大会長 高橋正紀教授(大阪大学)
大阪の会場で記念撮影

※IDMC-13組織委員会
高橋正紀教授(大阪大学)、木村 隆教授(兵庫医科大学病院)、松村 剛先生(大阪刀根山医療センター)、中森雅之特任准教授(大阪大学大学院)、妹尾みどり・土田裕也(NPO法人筋強直性ジストロフィー患者会 DM-family)

この稿では、IDMC-13研究者・医療者向けセッションで行われた患者と家族に関連する内容をお伝えします。

ピーター・ハーパー メモリアルレクチャー

日本でも読み継がれている、「筋強直性ジストロフィー 患者と家族のためのガイドブック」の著者、ピーター・ハーパー教授。惜しくも2021年に亡くなられましたが、多くの著書を残され、その業績は筋強直性ジストロフィー研究の礎となるものです。
IDMC-13では6月22日18時から、「ピーター・ハーパー メモリアルレクチャー」を開催。ハーパー教授とともに研究をしていたデイビッド・ブロック教授と、患者団体Myotonic Dystrophy Support Group(MDSG)のマーガレット・ボウラーさんがハーパー教授の業績を振り返りました。

デイビッド・ブロック教授(ノッティンガム大学)
マーガレット・ボウラーさん(MDSG)
世界の患者団体から、プレゼンテーション

続く19時からは、時差を越えて患者団体のプレゼンテーション「Organization Update」が行われました。

英国のCure DMからは理事、エマ・ジェイン・アシュレイさんが、先天性筋強直性ジストロフィーのための活動を報告しました。

エマ・ジェイン・アシュレイさん(Cure DM)

ユーロ圏の筋強直性ジストロフィー患者団体の連合体である、Euro-DyMAは、録画ビデオで登場。創設者であり、理事長であるアラン・ジールさんのお話しの後、ヨーロッパ各国の患者団体からごあいさつがありました。

アラン・ジールさん(Euro-DyMA)
ヨーロッパ各国の患者団体がごあいさつ

アメリカからは筋強直性ジストロフィー財団(MDF)のCEO、ターニャ・スチープンソンさんが参加。現地時間で早朝4時にもかかわらず、笑顔で応え、アメリカでの活動や、「国際筋強直性ジストロフィー啓発の日」の制定と成果について話がありました。

ターニャ・スティーブンソンさん(MDF)
日本は、DM-familyが会場と青森を結んでジョイント講演

日本では、筋強直性ジストロフィー患者会(DM-family)副理事長の明地雄司、そしてオンラインで青森の自宅から、会員のフイッシャー直子が講演を行いました。

プレゼンテーションの詳細は、「国際筋強直性ジストロフィー会議IDMC-13報告(2)」に掲載しています。

会場で講演する明地雄司副理事長
オンラインで講演したフイッシャー直子

IDMC-13サイトでは、各国が原稿を寄せたウェブページを公開しています。https://idmc13.org/organization_updates/

Cure DMエマ・ジェイン・アシュレイさんが、先天性児の研究でポスター展示

研究者・医療者セッションでは、Cure DMのエマ・ジェイン・アシュレイさんが「英国における先天性・小児期発症筋強直性ジストロフィー(Congenital and Childhood Myotonic Dystrophy Type 1 in the UK)」というポスター展示を行いました。

Cure DMと英国ユニバーシティ カレッジ ロンドン病院 NHS財団が協働し、親に向けたアンケートを実施。回答者の多くが現在の症状や専門医からのアドバイスを記録しており、歩行能力や受けたケアなど具体的な症状についても記録されていたことを報告しました。

こうした調査の結果は、今後の先天性・小児期発症筋強直性ジストロフィー患者に向けた臨床試験の計画などに役立つだろうと結論づけています。

エマ・ジェイン・アシュレイさんには、先天性筋強直性ジストロフィーの息子さんがいますが、日々、患者団体活動に加え、こうした研究も積極的に行っています。

ポスター展示でのスライド(エマ・ジェイン・アシュレイさんが説明)
IDMC-13 ブロンズスポンサーとしてバーチャル展示

DM-familyは、2年にわたって会員の会費から1,000円分と、ご寄付を合わせてIDMC-13のブロンズスポンサーとして合計50万円を提供しました。

スポンサーには、「バーチャル展示」の権利が与えられます。バーチャル展示は、IDMC-13の参加者向けウェブサイトに1ページをいただき、会の概要やビデオ、パンフレットなどを参加者にご覧いただけます。

DM-familyでは2021年度の活動をまとめた年次報告書とビデオを展示しました。

年次報告書(Annual Rreport2021)画像をクリックするとダウンロードできます。
ビデオ(日本語付き)
IDMC-13 会場でも展示テーブル、参加者向けバッグにパンフレット

スポンサーは参加者向けにパンフレットなどを入れることもできます。
会場では展示テーブルをお借りし、「国際筋強直性ジストロフィー啓発の日」のバナーを掲げました。
近畿地方の会員が協力し、テーブルをセッティングしたほか、バッグにパンフレットを入れる作業をお手伝いしました。

会場での展示テーブル

展示テーブルの前で、AMOファーマのエミリー・ファンテリ先生に扇子で風を送る、妹尾みどり事務局長。大阪は暑かったですね!

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