高知市民公開講座レポート:寝てばかりでなく、「少し動く」のがコツ

2016年3月26日(土)、市民公開講座「知っておきたい筋強直性ジストロフィー@高知」が開催され、多くの患者と家族が集まりました。
DM-familyのメンバーも聴講し、当日の様子を取材しました。

「手がうまく動かない」で気がつくことが多い

 高知大学医学部の古谷博和先生から、「筋強直性ジストロフィーってどんな病気?」という講義がありました。遺伝子の説明ではカラーの図解が多用され、わかりやすい内容でした。この病気は有酸素運動で使う赤筋の方が障害されやすく、末端の方から症状が出やすいので最初は「手がうまく動かない」ことから、この病気とわかる人が多いとのこと。また、冬に症状がひどくなる傾向があるとの説明でした。

寿命を延ばすには、早期発見・早期対応がポイント

国立病院機構 刀根山病院の松村剛先生からは「色々ある合併症~定期受診は健康管理の第一歩~」として、定期受診の重要性が説明されました。

ほかの筋ジストロフィーでは平均寿命が延びていますが、筋強直性ジストロフィーでは平均寿命がそれほど伸びていません。これは全身の障害があることに加え、症状の自覚が乏しく病院を受診しないために発見が遅れたり、治療を中断したりする患者さんが多いことが大きな要因となっているそうです。

良い健康状態を維持するためには「まだ平気」と思わずに、定期受診をすることが欠かせません。筋強直性ジストロフィーは一世帯に複数の患者さんがいることが多いので、指定難病制度を活用して、世帯全体で費用を抑えることができる場合もあるそうです。

寝てばかりではなく、少し動く方がいい

寝てばかりいると、肺を動かしにくくなり、無気肺(肺の空気が減ってしぼんだ状態)になることがあるそうです。また食後すぐに横になると誤嚥のリスクもあります。

国立病院機構 徳島病院の藪田英吾先生からは、「健康維持にリハビリテーションができること」として、身体機能を維持するためのリハビリ方法の解説がありました。肩や首回りのリラックス、口のリハビリ、自転車エルゴメーターなど、医師と相談しながら運動を続けていくことが大事です。

転んで怪我をしないよう足に合わせた装具を使ったり、リハビリのための入院をして歩行訓練をしたりするのも効果があるそうです。徳島病院では歩行アシストやロボットスーツHALなど、リハビリに力を入れています。

治療法は進展中。治療薬の効果を十分に出すには合併症対策が必要

大阪大学大学院の高橋正紀先生から「薬の開発研究の現状と治験の仕組み」として、現在開発中の治療薬について解説がありました。デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどで進展している核酸医薬など、さまざまな方法の治療法開発が進んでいます。

しかし合併症があったり体調管理をきちんとしていないと薬の効果が十分に出ない可能性があるとのことで、今できることを確実に行うことが治療への第一歩と強調されていました。

治療法獲得のために、患者登録への参加を

国立精神・神経医療研究センターの木村円先生から「患者登録は未来への第一歩」として、治験を実施することを目標にした患者登録「Remudy」についての説明がありました。患者登録は治療法獲得に欠かせないことで、患者と製薬会社の双方にメリットがあります。

また、先生からは海外の動向として、米国でのデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療法獲得に、患者団体が大きな役割を果たしているとの紹介がありました。

患者が主体となり、患者登録はもちろん、患者団体に参加して薬の必要性を訴えたり研究者へのアピールをしたりすることも治療法獲得には欠かせないようです。

DM-familyも参加。リハビリ実演や患者・家族との対話をしました

設立したてのDM-familyからは、明地雄司さんと妹尾みどりさんが参加し、聴講しました。

明地さんは兄弟と自身の筋強直性ジストロフィー発症をきっかけに医師になることを決意し、今春医師国家試験に合格。4月から松山市民病院で研修医として勤務します。

その明地さんがモデルとなり、藪田先生に呼吸法リハビリ「咳の練習」*の実演をしていただきました。

会場には高知だけでなく、愛媛など遠方からの参加者も多く、この病気で困っている人が多いことがわかります。

「自分の病気を知りたくない、忘れていたい」という患者のご家族からは「やはり病気を知っていないと……。知らないでいるのがこんなに怖いこととは思わなかった」との声も聞かれました。

DM-familyは、この病気に関する情報を発信し続けていくとともに、患者と家族をつなげ、治療法獲得に向けてさまざまな活動をしていきます。​​

「咳の練習」を藪田先生に実演指導をしていただきました

(モデルはDM-familyの明地さん)

 

高知市民公開講座を開催してくださった先生方と、医療者

向け講座に出席してくださった先生方

 

 

*実演のビデオは会員限定の非公開ページでご覧いただけます。