2018年7月16日(祝)、筋強直性ジストロフィー患者会(DM-family)は名古屋駅前「ウインクあいち」1101会議室にて「筋強直性ジストロフィー 体とこころのケアin 名古屋」を開催しました。

当日は8時前から入場をお待ちの方をはじめ、多くの方がお見えになりました。9時10分から整理券を配布、10時前に定員に達しました。消防法のため、定員超過は許されておりません。「何としても聴かせてください!家族がこの病気です!椅子なんか要らないです!」とおっしゃる方に、同じ病気の当患者会がご参加をお断りするという苦渋の決断をせざるを得ませんでした。「昼でお帰りになる方の席が空けば」とお待ちいただいた方には、当患者会でお昼にお帰りになる方の人数を把握し、無事に聴講いただきました。
ご参加いただけなかった方、午前中に空席をお待ちいただいた方に、この場を借りて心よりお詫び申し上げます。

希少疾患である筋強直性ジストロフィー。しかし予想以上に、この病気で困っている患者と家族が多いことを、当患者会はあらためて認識いたしました。今後も、筋強直性ジストロフィーに関する、さらなる情報発信を続けてまいります。
何とぞ、みなさまからの温かいご支援を賜りたくお願い申し上げます。

専門医から伝えたいコツ

毎日ケアをしている人と、そうでない人は進行の速さが違う

最初に、国立病院機構 鈴鹿病院 久留 聡先生から「専門医から伝えたいコツ」の講義がありました。

「まず、自分の病気のことをよく知ってください」と久留先生。遺伝子の病気であり、ゆっくり進行すること。筋肉以外にも日中の眠気や疲れやすさ、白内障、心伝導、耐糖能異常などさまざまな症状があることを知っておきましょう。

「毎日ケアをしている人と、そうでない人は進む速さが違う。とくに筋力低下・嚥下・呼吸の3ポイントが重要です。」

ミオトニアはほかの病気でも起きる。「筋肉がやせる」ことを知っておこう

運動症状として起きるのは、ミオトニア(筋強直)と呼ばれる症状です。たとえば、ぎゅっと握った手が開きにくくなる。しかし、気をつけたいのは「ミオトニアがあるから筋強直性ジストロフィー」とは一概には言えない点です。

ミオトニアは、ほかの病気でも起きる症状です。「ミオトニアがあって、筋肉がやせる」のが筋強直性ジストロフィーです。

「自分には誤嚥は起きていない」と思い込まない

筋強直性ジストロフィー患者は、食べ物を認識する先行期から、噛みくだく準備期、飲み込む口腔(こうくう)期、ノドを通過する咽頭期、食道期まで、どの段階でも障害が起きる可能性があります。

「食べ物を次から次へと口に突っ込む患者さんが多い。これは絶対にやめてください。」

「きちんと噛めていますか?咬合不全と言って、噛み合わせが悪いことや虫歯の患者さんは多いです。噛むことが難しくなるのですね。」

「呼吸をちょっと止めて→飲み込み→呼吸する、という一連の動作がうまくいかない患者さんも多いです。」

「ノドや食道で食べ物が止まってしまうこともあります。」

つまり、筋強直性ジストロフィー患者は「食事が下手」、と認識する必要があります。
しかし「自分にはそんなことは起きていない」と多くの患者が思い込んでいます。

本当にうまくいっているかどうかを確かめるためには、嚥下造影検査を行う必要があります。食べ物を噛み、ノドから食道へスムーズに行かない患者さんは意外と多いのです。
嚥下造影検査をしないと、自分がどんなに悪くなっているかはわかりません。

「自分だけは別」という考え方を改め、嚥下造影検査を受けてください。
嚥下に無頓着でいると、誤嚥性肺炎を起こす可能性が高くなるからです。

誤嚥性肺炎とは、肺に食事が誤って入ることで起きます。誤嚥性肺炎を繰り返して、何度も入院してしまうと長期入院になります。

「嚥下をいかに上手に行い、誤嚥性肺炎をいかに防ぐかは、患者さんの命にかかわることです。誤嚥性肺炎を繰り返すかどうかで、寿命は違う。今日はそのことを強調したいです。」

咳を助け、人工呼吸器を付ければ生存率が伸びるはず。しかし・・・・・・

筋強直性ジストロフィー患者に起きやすい症状としては呼吸不全もあります。筋力低下でポンプ不全になり、悪くなると窒息につながります。

咳が出ない=痰が出せないでいると、無気肺になる、軽い肺炎が重症化することにもなります。

そこで大切なことは「呼吸ケア」です。呼吸ケアの目的は、タイムリーに合併症の予防と管理を行うことです。咳の最大流量(Cough Peak Flow)で、自力で痰を出すことが困難かどうかを測ることができます。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、人工呼吸器の普及で平均寿命が10年以上延びています。
咳を助ける機械(カフアシスト®など)を使い、体に酸素がきちんと届くようにするために人工呼吸器を付ければ、筋強直性ジストロフィー患者も生存率が伸びるはず。にもかかわらず、いまだ良好なデータが出ないままです。

呼吸に関しては、筋強直性ジストロフィー患者に特有の問題がいくつかあります。

  • 呼吸調節の異常
  • 呼吸が苦しいという困難感が欠如している:症状の自覚がない
  • 肺活量が割と保たれているのに、夜間の睡眠時に呼吸が低下している

しかしここで、久留先生は人工呼吸器を使って経過が良好であった例を紹介しました。

夜間の人工換気療法で改善した患者の例

その方は、34歳くらいから握力が低下、40歳くらいから歩くとつまずくようになりました。45歳のときに鈴鹿病院に来院して筋強直性ジストロフィーと診断され、46歳で起床時に頭痛があり、日中過眠が出るようになりました。

検査をしてみると、睡眠時に無呼吸があり、血液内の酸素も低い状態でした。そこで、夜間だけ人工呼吸器を装着して、BIPAP(バイパップ:吸気と呼気に合わせて、2つのレベルの圧を気道に加える補助換気法)療法を行ったところ、無呼吸の回数が減り、良い睡眠が取れ、起床時の頭痛や日中過眠が少なくなりました。
BIPAP療法を続けることで、良い結果が出ることもあるのです。

効果的な非侵襲的人工換気療法(NIV)を行うために、患者と家族、主治医との協力が必要

睡眠時無呼吸や血液中の低酸素を改善するために、BIPAP療法には効果があることが、こうした実例からもわかっていますが、依然として筋強直性ジストロフィー患者にBIPAP療法を導入することは困難です。

なぜなら、年単位で悪くなっていくため、患者が苦しい状態に慣れてしまい、症状の自覚もないので、NIV療法を行う意味がわからない患者と家族が多いためです。
またいったん導入しても続けなくなる患者もいます。人工呼吸器のマスク部分と顔が合わないと、かえって苦しくなることもありますので、定期的な調整は欠かせません。
*NIV(Noninvasive ventilation)療法:体に傷をつけたり管を入れたりしない人工呼吸器療法

日中過眠と眠気は、1.睡眠をつかさどる中枢神経障害、2.睡眠時の呼吸異常に由来する二次的症状の2種の原因が考えられており、1だけの場合は人工呼吸療法で眠気の改善はしませんが、1と2、または2だけの場合は人工呼吸療法での効果が期待できます。

本当は睡眠時の無呼吸や日中過眠を防ぐことができるかもしれない。
その希望を持って、患者と主治医がタッグを組んでNIV療法に取り組みましょう。

日常生活で重要なこと:症状がなくても定期的な呼吸機能チェックを

久留先生から、最後に示された重要ポイントです。

1.転倒に注意する

2.誤嚥・窒息に注意する

3.気道感染に気をつける:痰を出す力が弱くなったら補助をする

4.症状がなくても定期的な呼吸機能チェックをする

患者の症状は患者自身だけではわかりません。軽症だからと思い込まず、専門医によるチェックが患者の寿命を延ばすことにつながります。

(2)に続く