2019年5月26日(日)、リファレンス⼤阪駅前第4ビルにおいて開催した「先天性筋強直性ジストロフィー親子のための勉強会 in 大阪」は、患者と家族同士の出会いと語り合う場ともなりました。

「この子連れて死のうかな……」その時の夫の言葉が転機に

筋強直性ジストロフィー患者会では、今回初めて先天性筋強直性ジストロフィーの子どもを持つ親からプレゼンテーションをする機会を設けました。
会員の宮部沙紀は、札幌から続く一連の「先天性筋強直性ジストロフィー親子のための勉強会」に向けて、企画・助成金申請から携わっていました。宮部は「自分も最初は右も左もわからず、同じ立場の親の話を聞きたかった。わたしが話すことで役に立てば……」と講演を引き受けました。

宮部は少し緊張しながら、話し始めました。
出産で切迫早産になり、大学病院に入院していた我が子に初めて会ったとき、たくさんの管がついていて驚いたこと。「おそらく筋疾患」と医師から告げられたものの、何度も別な病名が示され、そのたびに病気をネットで調べ、ノイローゼ気味になったこと。

そして「先天性筋強直性ジストロフィー」と確定診断。同時に自らも筋強直性ジストロフィーを持っていることがわかりました。
まさか、自分が原因だったなんて……。何度も自分を責めました。
夫が転勤したばかりで知り合いもおらず、睡眠時無呼吸症候群がある息子の息が止まっていないかどうか、眠れずに見守る日々。疲れ果て、夫に「この子連れて死のうかな」とつぶやいてしまいました。

夫は怒るどころか悲しい目をして言いました。「そんなこと、言わないで……」
夫も辛いのに、自分の前では気丈に振る舞ってくれている。自分だけが辛い思いをしているのではないと気付きました。
「いつまでも下を向くのではなく、この子のために、今できることをしよう。後悔したくないから、できることは全部やる」と決心しました。

子どもはゆっくりとながらも成長しました。リハビリに熱心な療育園に通わせ、1歳9か月で歩けるようになったときには家族全員で喜びました。

今、宮部は子どもに療育園で知った「PECS」という絵カードを使ったコミュニケーションを試みています。子どもが絵カードを示すことで、何を要求しているのか具体的になります。そして不明瞭ながらも聞き取れる言葉が増えました。「マ…マ」。
自分の名前も言えるようになり、その時の喜びを宮部は患者会内の非公開ページに投稿、多くの会員が祝福したことは言うまでもありません。

最後に、自身の経験から先天性筋強直性ジストロフィーの子どもを育てるときに大事なことを挙げました。

①家族と周囲の理解とサポートがあること。
夫の両親から、「負い目を感じることはない。かわいい孫であることには変わらないから、みんなで大事に育てよう」と言ってもらえ、精神的にとても救われたと言います。

②自分の居場所を持っていること。
療育園の親たち、患者会のメンバーなど、自分なりの居場所があることが大事です。
週に何日か、児童デイサービスに子どもを預け、自分の時間を持つようにしていることも家族の安定につながります。

③専門医を定期的に受診する。
遠くても、専門医に診てもらうと、そのときにすべき検査を速やかに受けられた経験から、信頼できる専門医に診てもらうことが重要と話しました。

宮部は会場に向かって呼びかけました。
「治療薬がないから、やることがない」ではなく、やるべきことはたくさんある。
苦労だけでなく、喜びもある。
きれい事のように聞こえる人もいるかもしれない、自分もそうだった。
でもとにかくひとりで抱え込まず、いろいろな人に協力してもらいながら、自分の子どもを育てていこう。

「パパとママのもとに、生まれてきてくれてありがとう」
と言って話を終わった瞬間、会場は大きな拍手で包まれました。

*PECS ®(Picture Exchange Communication System):絵カード交換式コミュニケーションシステム
*PECSは、現段階ではすべての先天性筋強直性ジストロフィーの子どもに効果があるとは言えません。訓練方法はお子さんに合わせて探してください。

自然と会話が続く、ランチ交流会

宮部のプレゼンテーションの後で、ランチ交流会が始まりました。
ご家族やご夫婦でランチをいただいているので、DM-familyでは最初にマイクを回してお名前とお住まいの都道府県名だけをお話しいただき、その後は自由な交流時間としました。

すると、会場のあちこちで会話が始まりました。
宮部には、たくさんの親たちから「PECS」や「児童デイサービス」についての質問が寄せられました。

また、子どもたちを休ませる休憩室では親や祖父母も一緒に休憩。
子ども同士がハグをする場面もあり、親たちがびっくりするという一幕もありました。
もしかすると、子どもは子どもなりに、同じ病気の子どもと共感しているのかもしれません。

親にもできることがある。定期的な受診と患者登録

講義の中で、愛媛大学医学部附属病院で後期研修医を務め、DM-familyの副理事長でもある明地雄司は、患者会顧問である国立病院機構 大阪刀根山医療センター 松村 剛先生の監修のもと、母親たちに向けた講義「子どもを育てるパパ・ママも定期受診で健やかに」を話しました。

明地は自身も筋強直性ジストロフィー患者であり、年に1回、大阪刀根山医療センターで検査入院を行い、全身の検査をしています。

親だからこそ、子どもを育てて行くためにも、自分の健康管理をきちんとしておく必要があります。

明地は現在、同じ筋強直性ジストロフィー患者の診察をするようになりました。
患者と家族の思いはわかっている。しかし今は医師の立場として、気をつけてほしいことを語りました。

また患者登録についても、重ねて親の患者にお願いしました。
日本の患者の存在を知らせたい。翌月にはスウェーデンで開催される筋強直性ジストロフィーの国際学会IDMC-12で展示をすることも決まっていました。

明地から会場に向け、患者と家族の写真を撮影したいと呼びかけ、参加者全員が1枚の写真に収まりました。

この写真はただちにIDMC-12展示に使用し、会場での展示を行うことができました。
ご協力いただいた参加者、講師の先生方、ありがとうございました。

公益財団法人 小林製薬 青い鳥財団さまもお見えに

DM-familyは「先天性筋強直性ジストロフィー親子のための勉強会」を札幌、大阪、福岡で開催するための助成を小林製薬 青い鳥財団さまからいただいています。
この日は休日にもかかわらず、会の様子をご覧いただくことができました。

100人近い参加者のうち、親や祖父母と一緒に子どもたちが何人も来ており、また近畿圏だけでなく遠方からの参加者も多数いらっしゃいました。
小林製薬 青い鳥財団さまの「あったらいいな」という理念に近い会を実現することができたのでは、と思います。

公益財団法人 小林製薬青い鳥財団のみなさまに、「先天性筋強直性ジストロフィー親子のための勉強会」に助成をいただきましたことを深く感謝申し上げます。

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