「先天性筋強直性ジストロフィー親子のための勉強会 in 福岡」レポート(1):あの子、変わってる?意欲低下の子どもを救うには

2019年9月22日(日)、福岡県のJR博多シティにおいて「先天性筋強直性ジストロフィー親子のための勉強会 in 福岡」を開催しました。当日は台風17号が接近したなか、約40名の患者と家族・支援者が参加し、長時間の講義を熱心に聴講しました。

「先天性筋強直性の子どもを育てるときに、気をつけたいこと」とは

突然死や青年期後の進行に備える

最初の講義は東京女子医科大学 小児科 石垣景子先生からお話しいただきました。

先天性筋強直性ジストロフィーは成人の筋強直性ジストロフィーと症状が異なります。

母も患者である場合がほとんどで、周産期の7割で胎児心拍低下、胎児仮死などで異常分娩が起きています。呼吸障害などから新生児期の死亡率も高いです。

しかし、「新生時期を乗り越えると、多くのお子さんが独歩を獲得できるようになります」と石垣先生。

出生時にいかに後遺症を残さないようにするかが、その後の発達に大きく影響します。

母子ともに、注意すべきは不整脈による突然死です。何もなくとも年に一回「血液検査」「心電図」、定期的な「ホルター心電図」「心エコー」をしましょう。

また、子どもが歩けるようになってもリハビリテーションを継続し、定期的な筋力や関節、側湾の評価やストレッチでの発達促進をしていくと、青年期後の進行に早めに対応できます。

子どもの自信を失わせない指導を

先天性・小児型筋強直性ジストロフィーの子どもたちは発達障害、知的障害が起きますが、軽度から重度までさまざまで、必ずしも全員が重度とは言えません。

知能指数評価から、言語的な情報や学習経験による判断力が比較的高く、積木や符号など視覚的な情報を取り込む能力が総じて低いとわかってきました。

単純な言語的記憶は問題なく、ダンスや体操のような「繰り返し動作」も多くの子どもが得意です。

「簡単な言語にする」「繰り返し行う」を教育に導入して子どもの自信をつけ、意欲の低下をさせないようにしましょう。

また、遠視・乱視、視力低下、中耳炎による難聴によって学習障害、言葉の遅れが生じることがあります。子どもは見えていない・聞こえていない状態が普通のことと思っている様子が、DM-family内でもよく話題になります。眼科、耳鼻咽喉科に一度は受診しましょう。

コミュニケーション障害には適切な教育・療育の介入を

先天性・小児期発症筋強直性ジストロフィーの子どもは「あの子、変わっている……」と言われてしまうことが多いです。理解力が低下し、包括的な判断ができない。意欲が低下している。状況を理解できないのに、高度な言葉を使えてしまう。

その結果、失敗体験を繰り返して人間関係に消極的になりがちです。

そこで子どもが無意欲にならないよう、「どう答えるべきか」を覚えさせ、自信をつけ、子ども自身がしたい方向に誘導します。親のみなさんは、子どもの知能検査の結果ではなく、子どもが何を得意とし、何が苦手かを理解してあげましょう。

保育園・幼稚園・小学校では、同年代の子どもとの集団生活に積極的に参加してください。親だけでなく、他者との交流で人間関係スキルを身につけましょう。

教員にも正しく病気を知ってもらい、病気の特徴に合わせた指導をお願いしてください。

「遺伝について知っておこう」

熊本大学病院 小児科 小篠史郎先生からは「遺伝について知っておこう」の講義をしていただきました。

筋強直性ジストロフィーの遺伝子と特徴

日本人患者に多いとされている筋強直性ジストロフィー1型は19番染色体のDMPK遺伝子にCTG塩基の繰り返しが50回以上あり、異常なRNAが蓄積することでさまざまな症状が起きます。CTG繰り返し数が多いほど症状が早く・重く現れます。

常染色体優性遺伝形式を持ち、子どもを授かると50パーセントの確率で同じ病気を持つ子どもが生まれます。

中でも先天性筋強直性ジストロフィーはCTG繰り返し数が1000回以上あり、生まれてすぐから筋力低下、呼吸障害などの症状が現れて、後に知的障害も明らかになります。

また、この病気では親から子に伝わる際に、繰り返し数が伸長しやすく、親よりも子どもの症状が重くなる表現促進現象があります。親の症状がない・または軽い場合であっても、先天性筋強直性ジストロフィーの子どもが生まれる可能性があります。

CTG繰り返し数はときに短縮することもあり、父親由来の場合で多いとされています。

筋強直性ジストロフィー女性の妊娠管理上で気をつけたいポイント

筋強直性ジストロフィーの女性は妊娠中、出産時に早産・陣痛が弱い・分娩時間が長引くほか、出産前は無症状であった母が産後、症状の悪化が見られる場合があります。妊娠中や出産時には特別な配慮が必要ですので、産婦人科医師とよく相談をして出産に臨んでください。

遺伝カウンセリングを受けて不安の解消を

出生前診断は妊娠後に赤ちゃんの状態について調べること、着床前診断は妊娠前に受精卵の状態を確認することです。

妊娠・出産を考える患者本人とご家族が、遺伝について気がかりな場合は、遺伝カウンセラーに相談しましょう。

悩みや不安に対して、専門的な訓練を受けた医師・カウンセラーがその不安の解消をするお手伝いをしています。

遺伝について悩む前に、遺伝カウンセラーに相談をしてください。

レポート(2)に続く