ストレッチ体験&交流会、名古屋で開催:患者と家族、ともに前向きになろう

2016年10月16日(日)、DM-familyは市民公開講座「知っておきたい筋強直性ジストロフィー@名古屋」終了後に「ストレッチ体験&交流会」を行いました。
約20名の方が参加し「家で出来るストレッチ」を体験しました。交流会では、様々な環境で生活されている方々から、日頃の悩みや病気に対する思いの声が聞かれました。

「自宅で簡単にできるストレッチ」

 国立病院機構 鈴鹿病院の堤 恵志郎先生から、自宅で簡単に出来るストレッチの指導をしていただきました。

 筋強直性ジストロフィーは、症状の進行に伴い、肩や手首、足首などの可動域が硬くなり、生活に支障をきたす場合があります。日頃から毎日継続してストレッチを行うことで、可動域を柔軟に保つことができるため、患者のQOL向上に役立ちます。
体験会では胸や股関節、膝、足部の伸ばし方、および、ミオトニア症状時の手のマッサージについて紹介があり、患者と家族が体験を行いました。
ストレッチを行うポイントは、「何回行うか」ということは重要ではありません。無理せず、自分のペースで、気持ちいいと感じられる範囲で行うことが大切です。

 紹介されたストレッチの例を示します。

<胸(腕)のストレッチ>

 腕を閉じる筋肉(大胸筋)が固くなると、腕が横に開いたり、体の後ろ側に動かせなくなったりすることがあります。それを防ぐためのストレッチです。

この状態で胸を張り、開くような感じで。息を吐きながら痛くないところで止め、5秒ほどストレッチ。その後、力をスーと抜きます。

※当日のストレッチに関するビデオと解説は筋強直性ジストロフィー患者会の会員限定Facebook*に掲載しています。

先生への質問と回答

Q.寒くなるとミオトニアの症状が酷くなります。早く解消させる方法はありますか?
A.温めることが一番です。濡らしたタオルを電子レンジで温めて、患部に当てることもオススメです。温めて血流を良くすると動きやすくなります。

Q.ストレッチはどの程度の強さで行ったら良いか?
A.無理は絶対にダメ。可能な範囲で結構です。日常ではあまり使わない筋肉・関節をストレッチで意識的に伸ばすことが大切です。また、毎日行うことが大切です。

Q.ストレッチはいつ行ったら良いか?
A.体が温まっているときですね。お風呂上がりなどが良いです。

Q.横隔膜が呼吸に重要と聞きましたが、ここの運動はどのようなものがありますか?
A.鍛えることは難しいですが、深呼吸をすることで意識的に横隔膜を動かすことが出来ます。

胸を開いて、肩の力を抜いたあと、腕を上げられる方は、上げながら意気を大きく吸う。

↓繰り返す↑

息を吐きながら腕を下げる。

Q.先天性児にはどのようにストレッチすれば良いか?
A.ストレッチは積極的に行うべきです。例えば肩を動かすと肺も動くので効果的です。肩は軽く支えながら、腕を上げます。寝たままで行っても良いです。日常では動かさない筋肉なので固くなりがちです。痛くない範囲で積極的に動かすべきです。

患者会事務局長(写真中央)を先天性児モデルとして説明いただきました。

Q.「ロボットスーツHAL」を使ったリハビリは有効なのか?
A.歩行が可能な患者にとっては非常に有効だと思います。筋力の負担をかけずにリハビリが出来るので、歩行できる期間を延ばすことができると期待できます。

 症状が無いうちから無理のない範囲で積極的に動かすことが重要です。そうすることで、筋力が低下してきても少しの力で曲げ伸ばしをすることできると期待されます。

「自分だけ……」ではない

 患者やその家族にとって、他の患者と会うことは少なく、「どうせ私は……」「なぜ自分だけ……」と思うことも少なくないと思います。市民公開講座や患者交流会は同じ病気の方と会える貴重な機会です。同じような患者や家族と会い、話をすることで共有できることが多く、「自分だけじゃないんだ」と前向きになれるものです。

 本疾患は遺伝性です。これは非常に大きな特徴であり、だからこその悩みも多いと思います。
今回私は、旦那さんが患者であり、そのご子息お二人と参加されたお母さまとお話をさせていただきました。親としては、子供への遺伝を心配すると同時に、その可能性をいつ、どのように告知しよう、また、自分が何をできるのか、どうやったら前向きになってくれるのか、など非常に悩ましい思いがあります。子としては、遺伝の心配はもちろん、将来への不安があり、親の思いを感じて辛い思いをすることもあるかもしれません。ご子息お二人はこれまでにいろんな葛藤があったと思いますが、今回のような講座に出席し、病気のことを詳しく知り、向き合う姿勢になっていることは素晴らしいことだと思いました。

 また、交流会において、ご一家で出席された患者の方から、「とにかく母親に泣かれるのが一番つらかった。自分としては、自分の病気がわかってむしろ納得したのに、周囲で泣かれるのは本当につらい」と話され、横にいたお母さまが涙ぐまれていました。
確かに、患者の親御さんとしては責任を感じてしまうこともあるかもしれません。しかし、本当に辛いのは患者自身です。患者が病気に向き合って生活するために、家族がしっかりすることも大事です。また、患者自身が前を向く姿勢を示すことで、家族も前向きになれると思います。

この病気は、すべきこと・できることが沢山あります。病気と向き合い、上手く付き合うことで、自身の将来を明るく照らせます。それは家族の将来も明るくするものだと確信しています。

 当患者会として、病気に対する「家族の向き合い方」についてのサポートも重要だと考えています。些細な悩みでも結構です。患者会の会員限定Facebook*ではそうした日常の暮らしを書き込んだり、コメントを書いたりすることで交流を行っています。似た環境の患者や患者家族からのコメントは非常に参考になります。また、患者交流会も可能な限り開催していこうと思っています。みなさまのご入会とご参加をお待ちしています。
*「Facebookの使い方がわからない」という方も気軽にご相談ください。

文責:土田裕也(患者会事務局担当)