2017年11月3日(金・祝)、筋強直性ジストロフィー患者会(DM-family)主催の「暮らしに役立つ筋強直性ジストロフィーとのつきあい方 in埼玉」、後半のレポートです。
後半最初に、国立精神・神経医療研究センター病院 身体リハビリテーション部の芦田愛先生から「患者にも家族にもできるストレッチ体験」の講演がありました。



じっとしていると日常生活で困ることが増えていく。だからストレッチ

「ストレッチというと、スポーツ選手が準備運動をするというイメージがありますね。でも、今回説明するストレッチは目的が違います」。セミナー後半の会場に、芦田先生のハキハキとした説明が始まりました。
筋強直性ジストロフィーは関節の変形が起きやすく、じっとしていると関節が変形したまま硬くなってしまい(関節拘縮)、日常生活で行いにくい動作が増えてしまいます。
こうしたことを予防するためには、毎日のストレッチが欠かせません。

反動をつけない・同じ姿勢で20秒・毎日最低1回から

ストレッチは、反動を付けないようにします。よく「いち・に・さん・よん」と体を上下に揺らしながらアキレス腱を伸ばす運動をすることがありますが、こうした方法ではありません。
同じ姿勢で20秒くらい、じっくり伸ばします。

回数は制限がありませんが、1日3回もストレッチをすると続かないのが普通です。無理をせず、1日1回から毎日続けることが大事です。
芦田先生ご自身がモデルとなったストレッチ写真を見ながら、ふくらはぎ・太ももの裏・腕、指のストレッチのコツを教えていただきました。

ふくらはぎストレッチは、爪先を手前に引くように

ふくらはぎを自分で伸ばす場合は、写真のように土踏まずよりも爪先側にハンドタオルなどをかけて手前に引きます。「かかとはついてもつかなくても大丈夫ですよ」と芦田先生。




自分で引くのが難しい場合は手伝ってもらいます。このときのコツは「手伝う人が、かかとをしっかり持って、腕で自分の体重を相手の爪先側の足の裏に乗せるような感じで押してください」。


太もも裏のストレッチは、立ったり着替えたりするときに必要な関節を維持

自分でできる方は、頭を床に付け、先ほどのハンドタオルを使って足を引きながら持ち上げていきます。「膝を伸ばしてくださいね!」と芦田先生。同じく、手伝う場合は手伝う人が、相手の膝が曲がらないよう手で押さえます。



指が曲がったままにならないように、腕と指のストレッチ

このストレッチは全員で座って行いました。指と手首を反対側の手で引いて伸ばします。
「多少曲がっていても、指先から3つの関節を全部伸ばすようにしましょう!」ご家族や介助をする方にも、役立つストレッチです。



またしても、怒濤の質問

芦田先生の講義でも、会場のみなさんから多くの質問がありました。その一部を抜粋します。



Q:手を握るのが苦手です。どうしたらいいでしょうか。
A:筋力低下で、動く範囲が限られてしまいますが、関節が固くならないようにストレッチを続けてください。

Q:家族が患者で、歩きづらく、立ち上がりにくい様子です。筋力低下を防ぐ方法はありますか?
A:動作をするときに関節の動く角度をストレッチなどで維持するようにしてください。立ち上がりにくいときは、椅子の座面の高さをクッションで調整するなどの工夫をしましょう。日常生活に必要な体力を維持するための運動は必要です。散歩やいつも行っている家事動作、運動も体力維持のためには重要です。筋力増強を目的とする筋トレでは、筋力が大幅に増強することは難しく、疲れて痛みがでたり、いつもできている動作が疲れてできなかったりすることもありますので、過剰な筋トレは勧めません。

Q:高齢者向けの、転倒予防などのストレッチはいいのでしょうか?
A:高齢者向けのストレッチと言っても、通常は筋力がある方向けです。筋強直性ジストロフィーの患者さんは、立った時のちょっとした関節角度の違いで転倒することがありますので、立って行うストレッチは避け、安全にできる範囲で行いましょう。ストレッチがご自身の体に合わないときには無理をしないようにしてください。

副理事長 明地雄司と佐藤美奈子のビデオ&体験談

交流会では、最初にDM-family副理事長 明地雄司が愛媛県松山市民病院で患者でありながら医師を目指しているというニュースを見ました。



テレビ愛媛「みんなのニュースえひめ」2017年1月放送

そして、今回のセミナーに参加している会場のみなさんにひとことずつ、「ご住所とお名前」をお話しいただきました。患者と家族、それぞれみんなが名前を持っています。「本人さん」、「○○さんのお母さん」ではなく、一人ひとりみんなが、個性を持った個人です。

最後に、DM-familyのもうひとりの副理事長、佐藤美奈子からロボットスーツHALを使った「医療用HAL(下肢タイプ)による機能改善治療」の体験をお話ししました。

車いすに乗っている佐藤が、HALを使った機能改善治療1ヵ月で、姿勢が良くなり、家の周囲を杖で歩くことができるようになったとの報告に、会場から大きなどよめきが起きました。



医療用HAL(下肢タイプ)による機能改善治療の様子



姿勢の変化



治療直後に家の周囲を歩行



体験を語る佐藤美奈子

わかりやすい講義と、参加者からの熱心な質問。その余韻を楽しむように、終了後も多くの方が会場に残り、交流を続けていました。



患者と家族、先生方との交流



当日の講師、尾方克久先生と芦田愛先生